著者のコラム一覧
荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

【ESBL産生菌】ペニシリンなどの抗菌薬が効かない耐性菌が日本でも増加中

公開日: 更新日:

「耐性菌」というと、どのような菌を想像しますか? 有名どころでは「MRSA」でしょうか。最近は「PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)」や「BLNAR(β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)」なども話題となっています。

「ESBL産生菌」もこれらと同じく多くの薬剤に耐性がある細菌で、院内感染の重要な原因細菌のひとつとなります。1980年代にヨーロッパで最初に発見されました。

 ESBLとは、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrumβ-lactamase)のことです。β-ラクタマーゼとは、最もよく使われる抗菌薬であるペニシリン系、セフェム系などの抗菌薬、いわゆるβ-ラクタム薬を分解して抗菌活性を無効にする酵素です。このβ-ラクタマーゼにはそれぞれ分解できる抗菌薬の種類があり、ESBL産生菌はこれらのβ-ラクタム系抗菌薬を広く分解する酵素を産生する細菌です。ペニシリン系、セフェム系(第1、2、3、4世代)およびモノバクタム系抗菌薬を分解します。

 ESBLを産生する細菌は大腸菌やクレブシエラなどのグラム陰性桿菌です。尿や便、創部などの病変や、水道シンクなどの水回りの環境に生息します。そのため、MRSAのように接触で簡単にうつるということはありませんが、何らかの原因、たとえば尿道カテーテルの不適切な取り扱いなどで院内感染として広がるケースもあります。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 4

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  5. 5

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  1. 6

    巨人が助っ人左腕ケイ争奪戦に殴り込み…メジャー含む“四つ巴”のマネーゲーム勃発へ

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    支持率8割超でも選挙に勝てない「高市バブル」の落とし穴…保守王国の首長選で大差ボロ負けの異常事態

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝