著者のコラム一覧
荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

【ニューモシスチス肺炎】かつて「カリニ肺炎」と呼ばれていたカビによる日和見感染症

公開日: 更新日:

「ニューモシスチス肺炎」という病名を聞いたことがあるでしょうか? 舌を噛みそうな名前ですよね。この病気は「Pneumocystis jirovecii」という真菌(カビ)によって引き起こされる肺炎なのですが、耳にしたことがないという方が多いはずです。

 かつての呼び名である「カリニ肺炎」の方が有名かもしれません。以前は「Pneumocystis carinii」による肺炎とされていたためそう呼ばれていたのですが、ヒトで肺炎を起こすニューモシスチスは異なる種類(Pneumocystis jirovecii)であることが判明し、呼び名が変わったのです。

 ニューモシスチス肺炎は、正常な免疫能力を持つ場合、発症することはまれで、ステロイドの使用、エイズ、悪性腫瘍など免疫低下時に発症する、日和見感染症のひとつとされています。「カリニ肺炎」と呼ばれていた頃、エイズの患者さんに発症する致死的な肺炎として有名になりました。

 ニューモシスチスは細菌ではないため、一般的な抗生物質は無効です。最初に選択されるのは「ST合剤」という抗菌薬になります。ST合剤はサルファ剤であるスルファメトキサゾールとトリメトプリムという抗菌薬を5対1の比率で配合した合剤です。さまざまな副作用と薬物間相互作用の多さといった弱点があるため、ペニシリンなどの抗生物質の開発とともに使用頻度は少なくなりました。しかし、サルファ剤は人類が最初に手にした細菌感染症の治療薬(抗菌薬)で、ペニシリンなどの効き目が悪くなった耐性菌にも効果を示すことがあり、今でも重要な医薬品のひとつです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  2. 2

    小泉進次郎氏「コメ大臣」就任で露呈…妻・滝川クリステルの致命的な“同性ウケ”の悪さ

  3. 3

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  4. 4

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  5. 5

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  1. 6

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  2. 7

    関西の無名大学が快進撃! 10年で「定員390人→1400人超」と規模拡大のワケ

  3. 8

    相撲は横綱だけにあらず…次期大関はアラサー三役陣「霧・栄・若」か、若手有望株「青・桜」か?

  4. 9

    「進次郎構文」コメ担当大臣就任で早くも炸裂…農水省職員「君は改革派? 保守派?」と聞かれ困惑

  5. 10

    “虫の王国”夢洲の生態系を大阪万博が破壊した…蚊に似たユスリカ大量発生の理由