【ニューモシスチス肺炎】かつて「カリニ肺炎」と呼ばれていたカビによる日和見感染症
「ニューモシスチス肺炎」という病名を聞いたことがあるでしょうか? 舌を噛みそうな名前ですよね。この病気は「Pneumocystis jirovecii」という真菌(カビ)によって引き起こされる肺炎なのですが、耳にしたことがないという方が多いはずです。
かつての呼び名である「カリニ肺炎」の方が有名かもしれません。以前は「Pneumocystis carinii」による肺炎とされていたためそう呼ばれていたのですが、ヒトで肺炎を起こすニューモシスチスは異なる種類(Pneumocystis jirovecii)であることが判明し、呼び名が変わったのです。
ニューモシスチス肺炎は、正常な免疫能力を持つ場合、発症することはまれで、ステロイドの使用、エイズ、悪性腫瘍など免疫低下時に発症する、日和見感染症のひとつとされています。「カリニ肺炎」と呼ばれていた頃、エイズの患者さんに発症する致死的な肺炎として有名になりました。
ニューモシスチスは細菌ではないため、一般的な抗生物質は無効です。最初に選択されるのは「ST合剤」という抗菌薬になります。ST合剤はサルファ剤であるスルファメトキサゾールとトリメトプリムという抗菌薬を5対1の比率で配合した合剤です。さまざまな副作用と薬物間相互作用の多さといった弱点があるため、ペニシリンなどの抗生物質の開発とともに使用頻度は少なくなりました。しかし、サルファ剤は人類が最初に手にした細菌感染症の治療薬(抗菌薬)で、ペニシリンなどの効き目が悪くなった耐性菌にも効果を示すことがあり、今でも重要な医薬品のひとつです。