著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

論文世界と現実とのギャップを考える…人種より個々のばらつき

公開日: 更新日:

■マスク着用の勧めを守らない人をどう考慮するか

 バングラディシュ人と日本人の差であるが、この研究で、マスクを勧められる地域に居住したもののうち42.3%がマスクを着用し、勧められなかった地域の住民でも13.3%がマスクを着用していたと報告されている。マスクを勧められても半分が着用しないというのがこの研究の対象となったバングラディッシュ人の現実である。

 仮にこれが日本で行われたとしたら90%以上がマスクを着用するかもしれない。そうだとすると、日本人ではマスクの効果がもっとはっきりと示されるかもしれず、この研究結果を日本人に当てはめて考えた場合、マスク着用効果を過小評価することになるかもしれないのである。

 たとえば、半分以下のマスク着用率でも相対危険減少で12%程度の効果があるとすれば、90%着用すれば2~30%くらいの予防効果の可能性もある。日本人の研究をまたなくても、バングラディッシュ人と日本人の違いの一部は、このようにして検討できる面がある。

 ここで1つの疑問が生じる。この研究ではマスクの効果を測るのに、「マスク装着を勧められながらマスクを装着しない人」もマスクを着けたグループに入れて解析しているのだが、マスクを実際に着けた人だけで検討したほうがいいのではないかという指摘だ。もっともである。マスクを装着した効果というのであれば、実際に着けていない人を含めるとバイアスになる。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」