著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

人種差を問題にしつつ「動物データ」に納得する不思議さ

公開日: 更新日:

 これまで「情報の正しさ」という問題を繰り返し取り上げてきた。その中でマスクについての情報を「ランダム化比較試験」「メタ分析」と呼ばれる研究結果で見てきた。情報そのものの正しさを最もよく保証するからだ。しかし、そうした情報でさえ、多くの問題があり、正しい情報というには程遠いというのがこれまでの大ざっぱなまとめである。

 今回は、「情報そのものの正しさの吟味」に加え、「情報の当てはまりの正しさ」の問題にも触れてみたい。マスクの情報に即して言えば、デンマークやバングラデシュの研究が日本人に当てはまるのか、というわけである。

 マスクにしろ、ワクチンにしろ、あるいは治療薬にしろ、日本人を対象とした情報を紹介しないと、「外国人のデータが日本人に当てはまるのか」との批判が出る。人種による違いはあるので、もっともな疑問である。ただ、そうした批判を口にする人たちが平気で動物実験や試験管内のデータを利用して、いろいろモノを言ったりしていることに疑問を呈す声がほとんど聞かれないのはどういうことか。

 確認しておきたいのは、動物のデータや試験管内のデータに比べれば、人種の問題は極めて小さいと考えられている。むしろ、動物や試験管内のデータは、基本的には人間には適応できないと考えたほうがいい。それが基本である。以前強調したように、「病態生理」(ヒトが病気になったときに、体内でのメカニズムがどうなっているのか、異常を来している原因はなんなのかを解き明かすこと)は仮説にすぎないというわけである。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇