動物の行動や空の変化 大地震予測する宏観異常現象って?
異常を捉えることで地震の予測につながる
一方、紀伊半島から四国南方沖を震源とした46年12月21日の「南海地震」(M8=前回の南海トラフ地震)でも、津波で壊滅的な被害を受けた和歌山県串本町の資料に〈地震前に地鳴りを聞いた人は151人〉〈閃光を見た人は346人〉といった調査記録が残されている。
現在、串本町では「電磁波」測定など地震の前兆現象観測を行っている。その指揮を執るのが、電離圏異常発生の電磁気学的メカニズムなどを専門とする京都大学大学院情報学研究科の梅野健教授だ。
「地球上空には電離圏と呼ばれる電子が広がる層が存在します。電離圏は地震や火山、太陽フレアといった自然現象、ミサイル発射などの人為的事象によっても影響を受けます。この電子数を串本町にある京大・測位衛星観測拠点をはじめ、国土地理院が管理する全国約1300カ所の測位衛星観測点のデータを観察し、異常を捉えることで地震の予測につながると考えています」
実際、2011年の東日本大震災の本震(M9・0)、その2日前の前震(M7・3)の直前にも梅野教授のグループは上空の電離圏電子数の異常を捉えていた。さらに16年4月14日と16日の2度にわたって震度7を記録した「熊本地震」。1度目の地震が起きる20時間前と、2度目が起きた1時間前にも電離圏異常が観測されたという。
「11年の沖合地震、16年の内陸直下型地震のそれぞれにおいて、地圏、大気圏、電離圏で異常発生していたことが分かっています。地震雲、地下水や海水の変化、地鳴りなどの自然の異変も地震を起こす地球のエネルギーがたまったことで生じる可能性があると考えられます。前兆現象の候補を記録し、公開した上で、科学的に検証をする必要があります」
これらの研究結果は、米国地球物理学会の科学誌にも発表されて反響を呼んだ。梅野教授によると、M7以上の大地震の予測に使え、将来的には静止衛星を活用することでより長期のデータが取得でき、発生の1日前といった直前の異常検知も可能になるという。