大学入試「総合型選抜」突破のコツは英語とボランティア経験にあり
予備校通わず海外留学経験で合格した浪人も
その課題を解決するには幅広く学ぶ必要があるし、必要に応じて学習のやり方などを改善するケースもあるだろう。それだけに学習習慣の有無や構築力は、総合型選抜での重要な指標になる。
「早稲田大学に入学した学生を追跡してその後の成績を調べると、上位にランクされるのは総合型で入学した学生で、学校推薦型が2番手で、一般選抜は3番手といわれています。あくまでも傾向とはいえ、総合型で入学した学生は学習意欲が高いのです」
総合型の入試は独特だけに、その入試対策は高1から始まる。高1では希望する大学のオープンキャンパスなどに参加し、大学の教育方針(アドミッションポリシー)を把握、理解する。それに沿った活動を高3まで続けることが重要だ。
高3を迎えると、6月ごろに総合型のエントリーが始まり、9月ごろから書類審査や面接などが行われ、11~12月ごろに合格発表が一般的な流れだという。
この流れを踏まえた上でどんな対策が必要なのか。
「分かりやすい例でいうと、目的意識や探求心をもってボランティア活動に取り組むことがお勧めです。コツコツと続ければ、社会課題やその解決方法などのヒントが見つかります。その経験で培ったことを書類や面接で具体的に記し、語れるようにするのです。その一方で英語力を磨くことも忘れてはいけません」
孫氏の場合、父とともに内モンゴル自治区を訪れたことがあった。それをキッカケに問題意識が芽生えたのが砂漠化で、それをいかに解決するかが高校で学ぶテーマのひとつに。
一方、早大はアドミッションポリシーのひとつに、「アジアにおけるリーダーシップの発揮」を掲げる。そこで早大でのAO入試(総合型)では、内モンゴルでの経験を踏まえて日中関係への貢献について面接でアピールしたところ、合格を勝ち取ったという。
「総合型では、海外経験がある学生が有利なのは事実です。たとえばある学生は現役で失敗した後にフランスに語学留学。その経験を浪人時の総合型でアピールして立教大に合格しました。でも、地元での高齢者との関わりなどを通じて、問題意識や社会の課題に関心を持ち、自分なりの解決策やヒントを見つけた学生もしっかりと総合型で突破しています」
ダメなのは、部活での活動実績にあぐらをかくタイプだという。
「いろいろな部活で受賞経験があっても、そこから課題や別の目標を設定できない学生は、合格できません。どんなことでもよいので、積み重ねて探求し続けることです」
そんな選抜方法だけにメリットやデメリットも独特だそうだ。それらを列挙すると──。
【メリット】
●大学のアドミッションポリシーに沿う学生は、学科試験を通過する学力がなくても合格する可能性がある。
●個性が強みになるため、オタク的に追求するタイプが向く。
●座って考えるタイプより、とりあえず行動して実績を積むタイプ。
●浪人生や社会人もOKで地元枠も。
●進学校より標準的な高校や通信制高校の方が、評定平均を上げやすく有利なケースも。
【デメリット】
●難関大では基準の評定平均が高い。
●要求される語学資格の条件が厳しい。
●対策する予備校は都市部中心。
●高3からでは準備が間に合いにくい。
●国公立は定員が少ない。
総合型ではないものの東大の学校推薦型は、総合型と同様に探求心とその実績が強く問われる。それで2年前、合格を勝ち取った研究テーマのひとつは何と「トイレ」で、合格者の準備期間はほぼゼロと報じられて話題になった。子供のやりたいことがたとえニッチでも、それを突き詰める探求心があれば、東大や京大、早慶など難関大突破も夢ではないのだ。