「新紙幣で景気は良くなる?」7月3日お目見え…素朴な疑問Q&A集
タンス預金が“危ない”ってホントなの?
【Q】使えなくなるお札はある?
日銀がお札を最初に発行したのは1885(明治18)年。以来、53種類が登場し、31種類は使えない。現在、流通している紙幣はもちろん使用不可にはならない。ただし、券売機や自販機で“古いタイプのお札”が利用できなくなるケースはある。今回の新紙幣発行で、07年まで発行されていた1万円札(福沢諭吉、裏面は2羽のキジ。現在は鳳凰がデザインされている)、5000円札(新渡戸稲造)、1000円札(夏目漱石)が使えなくなる券売機が出てきた。
【Q】新紙幣に描かれる肖像画はどんな人物?
日銀は次のように紹介している。
<1万円札・渋沢栄一>生涯において500もの企業設立などにかかわり、「日本近代社会の創造者」と言われる。
<5000円札・津田梅子>生涯を通じて、女性の地位向上と女子教育に尽力した教育家。
<1000円札・北里柴三郎>破傷風を予防・治療する方法を開発した細菌学者で、「近代日本医学の父」と呼ばれている。
【Q】過去に肖像画になった人はどれぐらいいる?
日銀券は16人。菅原道真、藤原鎌足、聖徳太子、日本武尊、二宮尊徳、高橋是清、板垣退助、伊藤博文ら。日銀券が発行される前の政府紙幣(1868~72年)には神功皇后、板垣退助の2人が描かれた。
【Q】紙幣に動物が登場したことは?
ねずみ(旧10円札)や猪(甲10円札)、馬(5銭札)、ニワトリ(1円札)、ライオン(5000円札)など8種類ある。
【Q】今回の新札発行の経済効果はどれぐらい?
野村総研によると、財務省が新札発表直後の19年4月に示した日本自動販売システム機械工業会の試算では新紙幣・硬貨などの対応で、紙幣に約7700億円、500円硬貨(21年11月に発行開始)に約4900億円で合計1兆2600億円のコスト。今回の新紙幣発行のタイミングで500円硬貨も合わせて対応する業者は多い。こうした対応コストの合計は1兆6300億円ほど。年間の名目GDPを0.27%程度押し上げる経済効果とはじいた。
【Q】タンス預金への影響があるらしいけど…
長年貯めた“へそくり”が旧札になってしまうけど大丈夫? 不安に感じる人は多そうだ。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストのリポートでは、24年4月(直近)のタンス預金は57.6兆円あると試算した。前年同月比でマイナス0.8%。23年10月以降、ずっとマイナスが続いているという。
「仮に自分自身が巨額のお札を金庫に持っている大富豪であれば、『旧札は大丈夫か?』と一瞬でも思うはずだ。つまり、タンス預金の扱いを再検討してみる機会になっていると考えられる」と指摘。さらに、「22年4月以降、消費者物価上昇率は2%を超えて推移している。季節調整値では、22年4月↓24年4月に指数は6.0%上昇した。この間、貨幣価値は5.7%も目減りしたことになる」とした。
キャッシュで資産を持っていると損をするというわけだ。それだけじゃない。大金持ちが大量の旧札を銀行に持ち込んだら「このお金は怪しい、申告していない資産では……」と先方に勘ぐられかねない、と不安が募るかもしれない。04年の新紙幣発行のときタンス預金は一時7.5%も減少したらしい。今回、同じような現象となればおよそ4.5兆円がはき出される。
【Q】そのお金はどこに向かう?
熊野氏のリポートは「一部は金(ゴールド)にシフト」としている。金の店頭小売価格は1グラムあたり1万3000円を超えてきた。米ドルの高値警戒感から、ドルの代替物である金に需要が移っているのが主たる上昇要因ながら「タンス預金↓金」の効果も押し上げ要因の一つと分析している。