元プロボクサー江口勝昭さんが初めて語る「伝説の兄弟対決」
93年6月、日本プロボクシング史上、「最も痛々しい試合」が行われた。日本ストロー級王座決定戦、江口九州男・勝昭兄弟による“兄弟・同門”対決である。同じボクシングジムに所属する血を分けた兄と弟がリングの上で殴り合ったのだ。弟の勝昭さん(44)がこの一戦を振り返る。
「ランキング上位だった兄の九州男が王座決定戦に出場するのは決まってて、プロモートするジム側としては話題をつくって盛り上げたかったんでしょうね。対戦相手として、ランクインしたばかりのボクの名前がウワサに挙がった。ボクはジムにやりたくない、と何度も頼んだし、兄貴も同じ気持ちだったと思います。さすがに対戦させないだろう、と言ってましたし。ところが、ボクの方が再三にわたるジムの要請に押し切られてしまったんです」
JR大塚駅に近い角海老宝石ジムで会った江口勝昭さん、遠くを見るような目でこう言った。同ジムはかつて江口兄弟が所属していた。
「これには兄貴も複雑な気持ちだったんじゃないか。兄弟対決が決まった直後、ジムの裏で泣いてる兄貴を見たこともあります。それでも兄貴には試合じゃ容赦しないぞ、って言われました」