「悔いはない」村田修一の引退スピーチに感じた後悔の念
村田も自分が周囲からそういう目で見られているとは分かっていただろうから、余計に「悔いはありません」という言葉が重く感じた。おそらく心の奥底では、あらためて向き合うのも嫌になるほどの後悔が大きく大きく横たわっているのだろう。人はそういう負の感情を心に秘めているときほど、そこに蓋をしようと気丈に振る舞うところがある。志半ばで道を絶たれた人は、その苦い過去を前向きに肯定することで消化するわけだ。
そんなことを考えていると、村田と同じ松坂世代の一人である巨人・杉内俊哉も今季限りでの現役引退を発表した。彼は会見の席で「引退するほとんどの選手には、もっとできるんじゃないか、怪我さえなければ、という後悔の念がこみ上げてくると思う。僕もその一人」と、村田とは正反対の言葉を残した。近年の杉内は度重なる故障に苦しみ、正直なところ「引退もやむなし」といった状態だったが、そんな彼が後悔という湿っぽい言葉を口にして、一方の村田がすがすがしい言葉を並べたと思うと、余計に村田の引退劇が痛々しい。
村田は自分の実力に限界を感じて引退したのではない。NPB復帰への可能性に限界を感じて引退したのだ。「プロ野球は実力の世界」とよく言うが、時と場合によっては例外もあるのだろう。