もう不毛な忖度は不要に プロOBの野球評論に新たな道が
テレビを主戦場とする野球評論家は、プロ野球選手のセカンドキャリアとしては代表的な仕事のひとつだ。しかし、この道での成功とは、すなわちテレビ局にとって使い勝手の良い存在になるという側面もあるため、本来の野球評論からは逸脱してしまうことがある。
例えば元ヤクルトの古田敦也氏は2004年のプロ野球再編騒動のときに日本プロ野球選手会会長として経営陣に立ち向かい、ストライキを主導したリベラル派という印象があったが、今夏に高校野球情報番組「熱闘甲子園」のキャスターを務めているときは少々がっかりした。ご存じ、現在の高校球界には過密日程や投手の酷使などさまざまな問題が取り沙汰されているにもかかわらず、古田氏はそういったマイナス面には一切触れず、ただただ球児の激闘ぶりを美しく称えるのみ。すっかり牙が抜けてしまったように見えたものだ。
この「熱闘甲子園」は夏の高校野球を中継する朝日放送の番組であるため、その背景を考えると高校野球のマイナス面を批判しないのは当然だろう。よって、同局から報酬を得ている出演者も番組方針に従わざるをえず、いわゆる電波芸者になってしまう。その結果、現在のテレビには野球解説者や野球タレントはいても、野球評論家はほとんどいなくなった。