錦織圭を輩出 盛田正明氏が私財投じ財団を立ち上げた深層
90年代に入ってスペインのバルセロナ、イタリアのサンレモなどヨーロッパの温暖な地域にも設立され、東欧圏からの若手を育ててきた。最近では、ラファエル・ナダルが故郷のマジョルカ島にアメリカンスクールを併設したアカデミーを開いて話題になり、セリーナ・ウィリアムズのコーチで有名なパトリック・ムラトグルーが経営するアカデミーは若手の旗頭ステファノス・チチパス、天才少女ガウフを送り出して売り出し中だ。
■学校体育の強い影響
日本にこうした本格的なテニスアカデミーはない。
日本のテニスの伝統は古く、戦前の新聞報道など野球をしのぐほどスペースを割いていた。ところがプロ化が進み、88年のオリンピック復帰を契機に世界的普及が進むや、男女ともに低年齢化が加速した。ボリス・ベッカー、ステフィ・グラフからマルチナ・ヒンギス、マリア・シャラポワあたりまで10代が活躍した時代だ。
学業を終えてから世に出るのでは遅く、そもそも朝から晩までテニスという環境を支持する土壌が国内にはない。指導者不足は大きいが、学校体育の影響が強く“テニス漬け”という環境を用意できる現実は国内にはなかったし、これからもないだろう。そこで、テニス好きで、ソニー・アメリカの会長からソニー生保社長を歴任した盛田正明氏が引退後に発想したのが、優秀なジュニアをフロリダのアカデミーで育てるための橋渡し、盛田正明テニスファンドの創設だった。