男子フィギュア羽生結弦の五輪V3はGOEがカギ 絶好調チェンはジャンプ構成変えて勝負か
4日に開幕した北京五輪で注目を集めるのが、男子フィギュアスケートだ。
■チェンは団体で自己ベスト更新
まずはこの日、10チームによる団体戦が始まり、2018年の平昌五輪男子銀メダルの宇野昌磨(24)がショートプログラム(SP)で105.46点の自己新をマークした。その後、世界選手権3連覇中のネーサン・チェン(22=米国)が111.71点の自己ベストを叩き出して首位。羽生結弦(27)が持つ世界歴代最高得点の111.82点にも0.11差に肉薄した。
最大の焦点は8日のSPから始まる男子の個人戦。世界初となる4回転アクセルの実施を明言している羽生の五輪3連覇は達成できるのか。右足関節靱帯損傷から復帰したばかりでコンディション面に不安が残る中、ライバルは好調だ。
チェンのプログラムは得点を稼ぐことにウエート
チェンは五輪初出場となった平昌大会は5位に終わったものの、その後、羽生との3度の直接対決(19年3月の世界選手権、同年12月のグランプリファイナル、21年3月の世界選手権)でいずれも勝利を収めている。「チェン有利」の声も聞こえるが、羽生の復帰戦となった昨年12月の全日本選手権を取材したフリーランス記者の辛仁夏氏がこう指摘する。
「SPもフリーも今の羽生選手が最も得意とするジャンプの種類(アクセル、トーループ、サルコー)で構成されています。4回転アクセルを跳んでも、チェン選手の出来次第なところはありますが、ジャンプで失敗をせず、ミスのない演技をすること。全日本からの1カ月で4回転アクセルの成功率が上がり、q判定(4分の1回転不足。基礎点は満点で出来栄え点に減点がある)にとどめるか、認定されて転倒するか、もしくは成功させることができれば勝機は出てきます。全日本の羽生選手と全米のチェン選手のジャンプ構成を比較すると、チェン選手の方が得点源のあるジャンプを跳んでいますが、それほど差はありません。羽生選手が完璧な4回転アクセルを跳び、(すべてのジャンプで)GOE(出来栄え点)加点が大幅につけば、互角に戦えます」
チェンの強みは何か。辛氏がこう続ける。
「全米選手権のジャンプ構成を見るとSPから勝負にきていると感じました。基礎点が1.1倍になるプログラム後半に4回転ルッツ+3回転トーループの連続ジャンプを組み込み、フリーではプログラム前半に4回転フリップを2度、4回転サルコー、4回転ルッツを跳び、プログラム後半には完成度の高い連続ジャンプを2本配置しています。この構成を見ても、いかに得点を稼ぐことにウエートを置いているかが分かります。チェン選手の強さは引き出しの多さ。五輪本番ではさらに得点の上積みを狙うため、ジャンプ構成をこれまでと違うものにするかもしれません」
やはりチェンが有利なのか。
「全日本と全米でのジャンプ構成上の基礎点では、チェン選手が上回っていますが、合計得点に関わってくるGOEでの加点と減点が勝負のカギになる。全日本の羽生選手を見る限り、今季の右足首負傷の影響はほとんどないように感じます。五分五分の勝負になるでしょう。宇野選手が2強の一角を崩す可能性もあると思います」(辛氏)