2試合目の先発に備えて仮眠をとっていたが…ブライアントの同点満塁弾の歓声で飛び起きた
そのとき私は、西武球場の医務室で仮眠をとっていた。
1989年10月12日のダブルヘッダー。近鉄が優勝するためには連勝するしかない。1年前の川崎球場と似た状況で、1試合目の先発は高柳出己に。私は2試合目に先発することになった。通常のナイターなら寝ている時間から体を動かしていただけに、少し寝たいと思った。
球場内の医務室。ほのかに消毒薬の臭いが鼻をつく。真っ白なシーツの上で横になり、ウトウトしていると、突然、ベンチ裏から、「うぉー!」という地鳴りのような大歓声が聞こえて飛び起きた。
なんだ、この歓声は……いったい、何が起きたのか?
慌てて医務室を出てベンチ裏に行くと、ブライアントにこの日2本目となる本塁打が飛び出したのだった。
■同点に追い付く起死回生の満塁本塁打
ただの一発ではなかった。西武の先発は「オリエンタル・エクスプレス」の異名を取った郭泰源。1-5とベンチが劣勢を覚悟した六回、同点に追い付く起死回生の満塁本塁打だったのだ。