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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

テニスの新時代を握るパワー 破損したネットが物語る肉体改造とサプリメント

公開日: 更新日:

 1985年、17歳のベッカーが破壊的サーブでウィンブルドンを制した時、マッケンローはこんなことを言った。

「ウッドラケットで育った我々に、あのサーブは打てない」

 全豪4回戦、シナーのサーブがネットバンドを叩き、根元のネジが折れて試合が中断した。時速200キロ弱だったからシナーの一打ではなく、連打された挙げ句のラストパンチだろう。錦織圭は最近の選手について「パワーが違う」と話した。いつの時代もずぬけたパワー選手はいたはずで、ベッカーの背景は強化ラケットと分かりやすかった。いまは装備や戦術に沿った専門チームによる体力強化など複雑で、サプリメントも重要な役割を担っている。

 昨年、シナーにドーピング問題が浮上し、女子トップのシフィオンテクも軽微な処分を受けた。検査が頻繁かつ厳格な時代に、トップがあえてドーピングに手を出すだろうか。禁止薬物とサプリメントの境界線ギリギリでの強化が進み、パワーが創出していると考える。

 ジョコビッチの抵抗、錦織圭の復活はこうした激流との戦い──日本も無縁ではない。最近のジャパンオープンは、大物が揃う北京の裏で、次世代の布石舞台になっている。テニスは常に時代の先端を行く。2強が消えても話題は尽きない。

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