BOOKレビュー
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「蠕動で渉れ、汚泥の川を」西村賢太著
17歳の年末、貫多は御徒町の安洋食屋で出前係として働き始める。中卒で世に出て以来、日雇いの港湾人足や製本工場などで糊口をしのいできた貫多にとって、賄いがつく飲食店での仕事はあこがれだった。同い年の高…
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「熱闘!介護実況」松本秀夫著
ラジオ局の人気アナウンサーによる母親介護記。 1999年秋、それまで元気いっぱいで人生を楽しんでいた母が、突然体の不調を訴える。診断は胆石だった。手術を終えて、一時的に祖母の家に身を寄せるが…
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「ファイティング40、ママはチャンピオン」鈴木一功著
2児の母であり、PTA会長もこなす40歳の妻が芝居の役づくりのためボクシングジムに通い始めたところ、ある日4回戦ボーイの鼻をへし折ってしまう。ジムの会長に才能を見いだされた妻はそれを機に本格的にトレ…
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「笑点 五〇年史 1966-2016」
初回から番組「笑点」に出演を続け、先日勇退した桂歌丸によると、当初は司会の故立川談志の影響もあって、番組は陰気で、1年ももてばいいかなと思ったという。そんな裏話が満載の現役メンバーへのインタビューを…
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「治部の礎」吉川永青著
天正10(1582)年、備中を攻略中の秀吉は清水宗治の抵抗にあう。軍師・黒田官兵衛は、清水がこもる高松城を水攻めするため、近隣の百姓らが持ち込む土嚢に米や金を支払う。秀吉の近習・三成は、主君の財を使…
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「黙って寝てはいられない」小泉純一郎談、吉原毅編
原発事故以来、「原発即時ゼロ」を訴え続けてきた元総理による提言集。 現役総理のときは、原発は必要だと考えていたが、知れば知るほど原発はクリーンでも安全でも安くもないことを痛感。原発推進派の主…
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「お茶をどうぞ」向田邦子著
没後35年を迎えた作家の生前の対談を発掘して編んだ対談集。 親友でもある黒柳徹子氏が進行役を務める番組では、当時ベストセラーになっていた「父の詫び状」が話題に。乳がんの手術を体験し、遺言のつ…
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「アンマーとぼくら」有川浩著
「ぼく」は、おかあさんの晴子さんの休暇に付き合うため、沖縄に帰省する。晴子さんは亡父の再婚相手で、ぼくとは血がつながっていない。ぼくが小学4年のとき、母が病気で亡くなった。写真家だった父は、仕事を理由…
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「ぼくの花森安治」二井康雄著
「暮しの手帖社」元副編集長が、NHKのドラマ「とと姉ちゃん」で話題の花森安治の思い出をつづったエッセー。 大阪出身の著者は、1969年に同社に入社。編集長の花森は、取材から撮影、原稿書き、レイ…
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「匿名交叉」降田天著
雑誌編集者の楓は、フリーライターの崎守から子供のコスプレ衣装を手作りするのがブームになっていると聞く。崎守に勧められ、その道の第一人者「ソラパパ」のブログを見た楓には、ソラパパなる人物の行動は自己満…
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「九十三歳の関ケ原弓大将大島光義」近衛龍春著
永禄3(1560)年、信長率いる織田軍が美濃の墨俣に出陣。迎え撃つ美濃の齋藤家の重臣長井隼人正道利に仕える弓の名手・大島甚六光義は、2町(約208メートル)先の織田兵を次々と射倒す。信長を狙った渾身…
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「40代を後悔しない50のリスト【時間編】」大塚寿著
人生最大の分かれ道である40代10年間の生き方・働き方をアドバイスする人生テキスト。 40代は、仕事と家庭の両立、自分の仕事と部下のマネジメントの両立など、さまざまな場面で両立が求められる世…
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「ブラック・ドッグ」葉真中顕著
地球規模で活動する動物愛護団体「ドーン・オブ・ガイア」、通称「DOG」が過激化。肉食をも否定し、ついには米国有数の畜産企業の経営者一家を襲撃するテロを行い、その一部始終をネット上に公開した。3週間後…
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「ドキュメント 水平をもとめて」鎌田慧著
皮革工場とその皮革産業を担ってきた被差別部落の歴史と人々の物語を追ったルポルタージュ。 屠場で傷をつけぬよう大事に剥ぎ取られた原皮は、塩漬けにされて皮革工場に運ばれ、さまざまな革製品の原料に…
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「龍馬の家計簿」大村大次郎著
浪人だった坂本龍馬が、私設海軍・海援隊設立の資金をどのように調達したのか。龍馬のそんな「懐具合」を追いながら、人生をたどる歴史読み物。 龍馬が、脱藩時に持っていたのは親戚などから借金して集め…
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「アメリカはなぜトランプを選んだのか」開高一希著
予想を覆し、アメリカ共和党の大統領候補の指名を勝ち取ったドナルド・トランプ。本書は、メディアで断片的、扇情的に伝えられる彼の発言を詳細に追い、何が有権者の支持につながったのかを読み解くリポートだ。 …
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「どこかでベートーヴェン」中山七里著
創立3年目の岐阜県立加茂北高校音楽科2年に岬が転入してきた。隣の席の鷹村は、ハンサムで頭もいい岬に対抗心を燃やす。しかし、岬のピアノ演奏を聞いた鷹村は、対抗心を抱いたことが恥ずかしくなる。鷹村だけで…
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「破婚」及川眠子著
著者はWinkの「淋しい熱帯魚」や、新世紀エヴァンゲリオン主題歌「残酷な天使のテーゼ」など、数多くのヒット曲を送り出した人気作詞家。そんな彼女が休暇で訪れたカッパドキアで18歳年下のトルコ人と出会い…
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「ウエディングドレス」玉岡かおる著
服飾研究家の窓子は、女学生時代の親友・玖美とレストランで会食する。前日、世界的なブライダルファッションデザイナーとして活躍する玖美のデビュー50周年を記念するファッションショーが催され、窓子も招待さ…
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「帰郷」浅田次郎著
戦争が終わって3カ月、新宿駅近くの闇市の片隅に立つ街娼の綾子は、体を売って日々をしのぐ自分が野良猫以下の生き物に思えて仕方ない。目の前の駅から汽車に乗れば、故郷に帰るのはたやすいが、それは死者が蘇る…