本の森
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「土・牛・微生物」デイビッド・モントゴメリー著 片岡夏実訳
牛などの反すう動物のげっぷにはメタンガスが多く含まれ、それが地球温暖化を進めていると、あたかも温暖化の元凶のようにいわれている牛だが、本書では逆に、温暖化を防止する救世主として登場する。土・牛・微生…
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「静寂と沈黙の歴史」アラン・コルバン著、小倉孝誠、中川真知子訳
におい、音、快楽、知識欲といった、およそこれまで歴史学の対象とは考えられていなかった、痕跡が残されていない不定形なものの歴史を描いてきたアラン・コルバンが今回テーマにしたのは「静寂と沈黙」。音も言葉…
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「嗅覚はどう進化してきたか」新村芳人著
映画にもなったジュースキントの「香水――ある人殺しの物語」は、超人的な嗅覚を持つ男の悲喜劇を描いたものだが、においと香りの奥深さを堪能させてもくれる快作だ。だが、改めて「においとは何か?」と問われる…
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「看取りの人生」内山章子著
集合写真のキャプションで「1人おいて誰々」というのがある。名のある人たちが多く写っていれば、必然的に「おかれて」しまう人も出てくる。著者の祖父は台湾総督府民政長官、外務大臣、東京市長などを歴任した後…
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「エドガルド・モルターラ誘拐事件」デヴィッド・I・カーツァー著 漆原敦子訳
1858年6月、ボローニャに住むユダヤ人商人のモルターラ家に2人の警官がやってきて、当家の6歳の息子エドガルドを連れ去ってしまう。異端審問官の命により、時の教皇ピウス9世のもとへ連れて行くというのだ…
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「グスタフ・クリムトの世界」海野弘解説・監修
2015年に公開された映画「黄金のアデーレ 名画の帰還」は、グスタフ・クリムトの名画「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」を、絵のモデルであるアデーレの姪、マリア・アルトマンがオーストリア政府を相…
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「オトナの保健室」朝日新聞「女子組」取材班
1980年と81年の2回にわたって雑誌「モア」誌上で行われた女性の性に関するアンケートはその後「モア・リポート」(83年)としてまとめられた。45項目のアンケートに対して、日本全国のあらゆる規模の市…
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「ヒロインズ」ケイト・ザンブレノ著、西山敦子訳
1925年4月に「グレート・ギャツビー」を刊行したF・スコット・フィッツジェラルドは、翌月早くも次の長編に取りかかる。しかしその後、妻のゼルダが精神を病み入退院を繰り返すなどで執筆は難航し、完成した…
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「トウモロコシの歴史」マイケル・オーウェン・ジョーンズ著 元村まゆ訳
いまから約400年前の1620年11月21日、イングランドのプリマス港を出港したメイフラワー号はアメリカ東海岸のケープコッドに到着した。乗員の102人はイギリス国教会の弾圧を逃れた清教徒たちで、ピル…
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「酒から教わった大切なこと」東理夫著
「酒にまつわる文章ほど、その人の本質がうかがえるものはないし、一方、そういう文章ほど人は自分をとりつくろう。とりつくろうところで、その人の本性が見える」とは、著者の言。つまり、徹頭徹尾、酒について書か…
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「文字と組織の世界史」鈴木董著
1957年、梅棹忠夫は「文明の生態史観」で新しい文明史モデルを提示し、大きな反響を呼んだ。梅棹は従来の西洋と東洋という区分ではなく、ユーラシア大陸の両端にある西ヨーロッパと日本を第1地域、間に位置す…
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「学校では教えてくれない世界史の授業」佐藤賢一著
このところ「世界史」に関連する本をよく目にする。政治・経済・文化その他、あらゆる場面でグローバル化が進み、いや応なく世界に組み込まれている現状の表れだろうか。ともあれ、よく考えてみると「世界史」とい…
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「丸山眞男集 別集第四巻 正統と異端一」丸山眞男著、東京女子大学丸山眞男文庫編
1970年代の初め、大きな書店の棚の一角に函(はこ)入りの「近代日本思想史講座」(筑摩書房)が並んでいたのをよく覚えている。函の背にシリーズタイトルが墨文字で記され、下方に赤い算用数字で巻数が示され…
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「日本のヤバい女の子」はらだ有彩著
昔話を換骨奪胎したものとしては、太宰治の「お伽草紙」が有名だが、昔話というのはよく読んでみると、ツッコミどころが多いことがわかる。たとえば福沢諭吉は「桃太郎」に対して、鬼ケ島から財宝を奪ってきたのは…
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「鳥!驚異の知能」ジェニファー・アッカーマン著 鍛原多惠子訳
英語の鳥頭(bird brain)は、愚かな人、間抜けな人、落ち着きのない人を指すそうだが、日本でも「鶏は三歩歩くと忘れる」ということわざがあるように、鳥は脳が小さく、賢くないというのが万国共通した…
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「不道徳お母さん講座」堀越英美著
2018年度から、小学校で「道徳」が正式な教科となり、家族愛、勤労と公共、正直誠意、礼儀など22項目を教えることになった。しかし、本書の著者がいうように、官僚のセクハラを訴えた女性記者の行為を「ある…
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「『ふつうのおんなの子』のちから」中村桂子著
いつの頃からか、日本を軍隊を持つ「ふつうの国」にしようという声が強まってきた。どうやら、憲法によって戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を規定している日本は「ふつう」じゃないと考える人がいて、現在政権の…
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「現代社会はどこに向かうか」見田宗介著
先日、内閣府が公表した「国民生活に関する世論調査」によると、現在の生活について「満足」と回答した人が74・7%で過去最高となり、満足と答えた割合は20歳代の男女の比率が高い。本書によれば、1950~…
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「向こう半分の人々の暮らし」ジェイコブ・リース著、千葉喜久枝訳
つい先頃、トランプ米大統領が自身に批判的な主流メディアを「敵」と名指ししたことに対し、全米350以上の新聞社が、報道の自由を訴える社説を一斉に掲載した。米国ジャーナリズムの心意気を示すニュースだが、…
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「歴史は実験できるのか」ジャレド・ダイアモンドほか編著 小坂恵理訳
タイトルを見たとき、首をかしげた。すでにある歴史をどうやって実験するのだろうか、と。ここでいう「実験」とは、自然実験あるいは比較研究法と呼ばれる手法で、現実に発生していたあるシステム同士が「多くの点…