本の森
-
「信仰と医学」帚木蓬生著
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」の〈大審問官〉の章に16世紀のスペインのセビリアにキリスト(らしき人)が現れるという挿話が出てくる。この小説が書かれたのは1879~80年。イエスならぬ聖母マ…
-
「THE LAST GIRL」ナディア・ムラド、ジェナ・クラジェスキ著、吉井智津訳
イラク北部からトルコ東南部にかけて住むクルド人に一定の信者を持つヤズィディ教は、キリスト教やイスラム教と同じ一神教だが、輪廻転生を信じたり、異端とされるクジャク天使を信仰することから、周囲のイスラム…
-
「探偵小説の黄金時代」マーティン・エドワーズ著 森英俊、白須清美訳
ジュリアン・シモンズの「ブラッディ・マーダー」は、ミステリーという文芸ジャンルをE・A・ポー以前の推理小説から説き起こし、続く探偵小説から犯罪小説の流れとして捉え、それに関わる作家と作品を詳細に考察…
-
「記憶術全史」桑木野幸司著
F・トリュフォーの映画「華氏451」は本の所持を禁止された世界を描いたものだが、その中に、本をまるごと暗記している「本の人々」が登場する。プラトンの「国家」やオースティンの「高慢と偏見」などを一言一…
-
「ジェット・セックス」ヴィクトリア・ヴァントック著 浜本隆三、藤原崇訳
若く美しく、未婚で、身なりがきれい、細身で魅力的、知性的で高学歴、白人で異性愛者、そして愛情深い――かつてのアメリカのスチュワーデスには模範となる完璧な女性像が投影されていた。白人という項目を除けば…
-
「なぜ私は一続きの私であるのか ベルクソン・ドゥルーズ・精神病理」兼本浩祐著
アイデンティティー――私が私であるという、一見自明のようなことだが、よく考えてみるとそう簡単ではないことに気づく。例えば、私の体はどこまで私の体なのか。爪や垢、髪の毛は私の体の一部なのか。あるいは口…
-
「封印された殉教」(上・下)佐々木宏人著
昨年、長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産が世界文化遺産に登録され、江戸時代のキリシタン弾圧に関心が寄せられるようになったが、忘れてならないのは、先のアジア・太平洋戦争下においてもキリスト教への弾…
-
「土・牛・微生物」デイビッド・モントゴメリー著 片岡夏実訳
牛などの反すう動物のげっぷにはメタンガスが多く含まれ、それが地球温暖化を進めていると、あたかも温暖化の元凶のようにいわれている牛だが、本書では逆に、温暖化を防止する救世主として登場する。土・牛・微生…
-
「静寂と沈黙の歴史」アラン・コルバン著、小倉孝誠、中川真知子訳
におい、音、快楽、知識欲といった、およそこれまで歴史学の対象とは考えられていなかった、痕跡が残されていない不定形なものの歴史を描いてきたアラン・コルバンが今回テーマにしたのは「静寂と沈黙」。音も言葉…
-
「嗅覚はどう進化してきたか」新村芳人著
映画にもなったジュースキントの「香水――ある人殺しの物語」は、超人的な嗅覚を持つ男の悲喜劇を描いたものだが、においと香りの奥深さを堪能させてもくれる快作だ。だが、改めて「においとは何か?」と問われる…
-
「看取りの人生」内山章子著
集合写真のキャプションで「1人おいて誰々」というのがある。名のある人たちが多く写っていれば、必然的に「おかれて」しまう人も出てくる。著者の祖父は台湾総督府民政長官、外務大臣、東京市長などを歴任した後…
-
「エドガルド・モルターラ誘拐事件」デヴィッド・I・カーツァー著 漆原敦子訳
1858年6月、ボローニャに住むユダヤ人商人のモルターラ家に2人の警官がやってきて、当家の6歳の息子エドガルドを連れ去ってしまう。異端審問官の命により、時の教皇ピウス9世のもとへ連れて行くというのだ…
-
「グスタフ・クリムトの世界」海野弘解説・監修
2015年に公開された映画「黄金のアデーレ 名画の帰還」は、グスタフ・クリムトの名画「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」を、絵のモデルであるアデーレの姪、マリア・アルトマンがオーストリア政府を相…
-
「オトナの保健室」朝日新聞「女子組」取材班
1980年と81年の2回にわたって雑誌「モア」誌上で行われた女性の性に関するアンケートはその後「モア・リポート」(83年)としてまとめられた。45項目のアンケートに対して、日本全国のあらゆる規模の市…
-
「ヒロインズ」ケイト・ザンブレノ著、西山敦子訳
1925年4月に「グレート・ギャツビー」を刊行したF・スコット・フィッツジェラルドは、翌月早くも次の長編に取りかかる。しかしその後、妻のゼルダが精神を病み入退院を繰り返すなどで執筆は難航し、完成した…
-
「トウモロコシの歴史」マイケル・オーウェン・ジョーンズ著 元村まゆ訳
いまから約400年前の1620年11月21日、イングランドのプリマス港を出港したメイフラワー号はアメリカ東海岸のケープコッドに到着した。乗員の102人はイギリス国教会の弾圧を逃れた清教徒たちで、ピル…
-
「酒から教わった大切なこと」東理夫著
「酒にまつわる文章ほど、その人の本質がうかがえるものはないし、一方、そういう文章ほど人は自分をとりつくろう。とりつくろうところで、その人の本性が見える」とは、著者の言。つまり、徹頭徹尾、酒について書か…
-
「文字と組織の世界史」鈴木董著
1957年、梅棹忠夫は「文明の生態史観」で新しい文明史モデルを提示し、大きな反響を呼んだ。梅棹は従来の西洋と東洋という区分ではなく、ユーラシア大陸の両端にある西ヨーロッパと日本を第1地域、間に位置す…
-
「学校では教えてくれない世界史の授業」佐藤賢一著
このところ「世界史」に関連する本をよく目にする。政治・経済・文化その他、あらゆる場面でグローバル化が進み、いや応なく世界に組み込まれている現状の表れだろうか。ともあれ、よく考えてみると「世界史」とい…
-
「丸山眞男集 別集第四巻 正統と異端一」丸山眞男著、東京女子大学丸山眞男文庫編
1970年代の初め、大きな書店の棚の一角に函(はこ)入りの「近代日本思想史講座」(筑摩書房)が並んでいたのをよく覚えている。函の背にシリーズタイトルが墨文字で記され、下方に赤い算用数字で巻数が示され…