シネマの本棚
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オウム広報部長・荒木浩と監督自身の「対話」
詩人エリオットに倣っていえば3月は残酷な月。3・11ばかりではない。20日は地下鉄サリン事件の日なのだ。 ただしあの事件の1年以上前から米国留学中だった筆者にとって事件は理解不能。直前の阪神…
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“カエルのペペ”がネトウヨのお気に入りになるまで
1月6日のトランプ支持者による米議会襲撃事件以来、あんなたわ言に踊らされる人間の心をずっと考えている。 「負けなんか認めない。行進しよう。俺も一緒に行く」 そうたきつけて自分はさっさと…
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風光の地・富陽を舞台に描く一族の哀楽盛衰
ちかごろテレビの衛星放送では中国の連続ドラマを多数放映している。それを見ると話の筋はともかく、セットと照明に金がかかっているのがわかる。映画は「絵」。その絵づくりを支えるのが「富」だ。 では…
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陰謀論の“元祖”をあつかった異色のドキュメンタリー
選挙に負けた腹いせに、荒くれの支持者たちをあおって連邦議会を襲撃させる蛮行に走ったトランプ。 あきれた話だが、哀れなのは「俺も一緒に行くぞ」とあおられたあげく、見捨てられたのも知らず議事堂で…
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天然無類の叔父が醸し出す静かな躍動感が魅力
こんな世の中だからせめて静かな映画を見たい。「鬼滅の刃」も結構だが、人の世の不条理から静かに目を反らさない物語に触れたい。 今月末封切りの「わたしの叔父さん」はそんな映画だ。 デンマ…
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「職業現場」としての映画で裏方として活躍
文学部とか国際ナントカ学部などで女子学生が卒論のテーマにしたがるのが「プリンセスアニメの変容」。昔の「キスを待つ」お姫さまから「自立した女」への変化、という思いつきだ。だがこの手の発想は大抵、映画を…
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イザベラ・ロッセリーニらが語るクリエーティブの秘密
今年が生誕100年というので映画「ヘルムート・ニュートンと12人の女たち」が先週から公開されている。それを見ながら1980年代を思い出していた。ドイツ人のニュートンは同じファッション写真家のR・アベ…
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「ネトフリ」躍進の秘密を探ったドキュメンタリー
映像配信サービスの「ネトフリ」ことネットフリックスが日本に進出して今年で5年。 当初は苦戦したが、今年8月末には有料会員が500万人を突破。しかも過去1年間だけで新規加入者が何と200万人だ…
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金持ち連中の中で道化じみていくカポーティ
トルーマン・カポーティはスコット・フィッツジェラルドと並ぶ20紀アメリカ文学史上の悲劇の天才。若くして文壇で成功を収め、一躍注目の若手になるものの、名声につきものの虚栄にあらがえず、結局は自滅した。…
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台湾人の独立意識が高まった「ひまわり運動」
抗議デモがすぐ「暴動」よばわりされる昨今。思い出されるのが6年前、台湾を席巻した「太陽花學連」こと「ひまわり学生運動」だ。 親中派・馬英九総統率いる国民党の強硬姿勢に「密室政治反対」を唱える…
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天性の愛嬌とはこの人のためにあるような言葉
小学生のころはヒーローの二枚目に憧れたものだが、中学になると二枚目半のほうが一枚上手だと気づく。そのきっかけがジャン=ポール・ベルモンドだった。アラン・ドロンと並ぶ仏映画界きってのスター。彼を知らな…
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創業者ベリー・ゴーディが語るヒット曲量産の秘密
戦後のベビーブーム世代にはモータウン・サウンドのファンが多い。 「初のヒップホップ大統領」といわれたオバマ前大統領も2008年選挙戦のとき、「やっぱりぼくの世代はマービン・ゲイとかがいいよね」…
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メキシコの泉の光と風景の幻想的な映像
映画はやはり映画館でなくては、と思う。ネット配信全盛の現代、コロナ禍で配信もさらに増えるだろう。それでも映画館でなければいけない。理由は「色」だ。それも黒の陰翳。写真集の印刷でスミ(墨)が決め手にな…
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歌い・踊る映像で描く若者たちの人生の暗部
近頃の若い監督たちの映画には、共通して独特の映像感覚がある。流れるようにカメラが突き進んでゆく映像が、自然な息遣いとなって目と胸に迫ってくる。 バイクや自転車やスケボーで自分自身が街中を疾走…
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ライオンとトラの咆哮が戦闘機の爆音に
腕のいい職人の話は気持ちがいい。簡潔で無駄なく、自然な深みがあって面白い。 ――とほめちぎりたくなるのが今月28日に都内封切りのドキュメンタリー映画「ようこそ映画音響の世界へ」だ。 映画の…
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肩を寄せ合うアパートでの差し迫った人間劇
いまから10年前の年末、ひとりの露天商の焼身自殺をきっかけにチュニジア全土で起こった反政府デモ。そこから始まったとされる「アラブの春」を、いまどれほどの人が覚えているだろう。 その後、デモは…
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国連第2代事務総長の死の真相を追う
新型コロナ禍で評判を下げた世界保健機関(WHO)。おかげで上部組織の国連までが機能不全の権化に見えた。 だが、翻って国連が理想主義の光を放った時代は果たしていつまでだろう。 そんなこ…
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気球で西ドイツへ脱出した一家の実話
自由な意思で動くことができず、他人との接触を恐れる社会。べつに新型コロナウイルス禍に揺れた日本の話ではない。 1970年代末、まだベルリンの壁が倒れる気配すら見せなかった時代の東ドイツの話で…
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自然養蜂をいとなむ老女の姿を描く誠実な映像
端正な、目を洗われるような映画である。新型ウイルス禍でようやく来週末に封切られる「ハニーランド」。 前評判では米アカデミー賞の「ドキュメンタリー映画」と「国際映画」の両部門にノミネートされた…
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次第に夢幻の気配を強める男の旅
映画館は夢を見る場所。「緊急事態」の下で痛感したのがそれである。自宅に5K映像の大型モニターがあったとしても、映画館の座席で見上げるスクリーンに勝るものはない。改めてそう感じるのは筆者だけではないだ…