「ネトフリ」躍進の秘密を探ったドキュメンタリー
「NETFLIX 世界征服の野望」
映像配信サービスの「ネトフリ」ことネットフリックスが日本に進出して今年で5年。
当初は苦戦したが、今年8月末には有料会員が500万人を突破。しかも過去1年間だけで新規加入者が何と200万人だという。
近年の米アカデミー賞でも、すでにネトフリのオリジナル作品「ローマ」が監督賞を受賞するなど影響力は歴然だ。
そのネットフリックス躍進の秘密を探った企業ドキュメンタリーが11日封切りの「NETFLIX 世界征服の野望」である。
企業ドキュメンタリーといっても日本ではPR映画程度の認識しかないが、アメリカではその会社のダメなところや失敗にも容赦ない目を向ける。創業者を含め初期の幹部たちが続々登場してあれこれ語る本作も、単なる成功物語ではなく、リアル店舗のフランチャイズチェーンでレンタル業界を制覇したブロックバスター・ビデオとの競争は、幸運に助けられたぎりぎりの勝利だったことがわかる。
ちなみに本作の原作に当たるのがジーナ・キーティング著「NETFLIX コンテンツ帝国の野望」(新潮社)だが、ここではちょっと違う角度から別の本を挙げよう。
ネトフリはコロナ禍の前から「非対面」型で映画を流通させるというビジネスモデルを成功させたが、この変化は「映画鑑賞」を巡る歴史的な変容過程に関わる。その実例がスティーヴン・キング著「ゴールデンボーイ」(浅倉久志訳 新潮社 840円+税)所収の短編「刑務所のリタ・ヘイワース」。冤罪で刑務所に入った囚人が巻き起こす「奇跡」の話で、これを映画化したのが「ショーシャンクの空に」だ。ところが実はこの映画、封切り当時の興行成績はぱっとせず、ビデオ化されてレンタル店の店頭で徐々に真価が認められた。映画館からビデオへという視聴形態の変化が「名作」を育てたのだ。 <生井英考>