「家族スクランブル」田丸雅智著
星新一の孫弟子と呼ばれる新世代のショートショート作家による、家族をテーマにした不思議な短編集。
特殊な空間を醸し出すランタンを披露する男の話「隣のランタン」、ある男が家電量販店に買い物に来た奇想天外な理由を描いた「母の米」、子どもの歯並びの悪さを自分のせいだといって悩む父親の話「歯並び」、分身が作れるせっけんで3人になった妻と暮らす夫の話「白妻、黒妻」、妻がフリルの着いた洋服ばかりを買う理由を描いた「箪笥のこやし」、長年連れ添った妻を亡くした男が妻にそっくりの金魚と遭遇する「おいらんちゅう」など、計18編が収録されている。
著者は、2011年に「桜」を「物語のルミナリエ」に発表してデビューし、12年に「海酒」で樹立社ショートショートコンテストの最優秀賞を受賞した気鋭の作家。「火花」で芥川賞を受賞した又吉直樹に絶賛され注目を浴びた。本作は単行本第4弾作品。デビュー以来、快進撃を続けている。(小学館 1300円+税)