「日本のコーヒー」は世界最高水準と称賛
今、日本のコーヒーは世界最高品質と称賛され、海外のカフェでは“日本のコーヒー”が新しいトレンドとして取り入れられるほどになっている。
メリー・ホワイト著、有泉芙美代訳「コーヒーと日本人の文化誌」(創元社 2500円+税)では、アメリカの人類学者である著者が、日本人の知らない日本のコーヒーの歴史と奥深さを解き明かしている。
2015年に東京都に出店するや、連日の大行列となったカリフォルニア州に本社を構えるブルーボトルコーヒー。実は今、サンフランシスコの同店ではサイホンやドリッパーなどは日本のハリオと上島珈琲の器具を使い、「キョウト・アイスコーヒー」と名付けた商品を販売している。他のコーヒー店でも、日本の器具を使って入れた日本のコーヒーは「店によい印象を与える」として、人気を集めているそうだ。
日本ではコーヒー店の熟練マスターによって絶妙に豆を配合したハウスブレンドのコーヒーが好まれるが、アメリカではこのような文化がほとんどないという。スペシャリティーコーヒー専門店で責任者にブレンドの構成比を聞いても、答えられる人はほとんどいない。なぜなら、ブレンドはコーヒー豆の販売業者が行うもので、そこには日本のハウスブレンドのような信頼もこだわりもなく、だから今海外で日本のコーヒーが支持されるのだと本書。
日本は保守的に見える半面、新しい文化が厳しく高い基準を超えたとき、国民はそれを受け入れて変容する柔軟性を持つ。日本のコーヒーもそうして世界最高水準に到達したのだと著者は分析する。他にも、日本のカフェの進化論やコーヒー豆の産地とのかかわりなども解説。おいしい日本のコーヒーを飲みながら読んでほしい。