生きている人も死にたい人も引きつける富士の樹海

公開日: 更新日:

 富士の裾野に広がる巨大な森林「青木ケ原樹海」。その名を聞いて真っ先に思い浮かべるのは、自殺の名所というイメージだろう。村田らむ著「樹海考」(晶文社 1550円+税)では、ルポライターとして20年以上にわたり、およそ100回も樹海を訪れている著者が、その目で見た樹海の真実をルポしている。

 樹海ではさまざまな落とし物を見つけることができる。自殺者が残していったテントの残骸も少なくない。遺体の回収とともに警察が撤去するのだが、作業が雑な場合も多く、木に結わえられたロープやロープの結び方の本、自殺の解説本などが置き去りにされていることが多い。著者が初めて樹海を訪れた際には、写真の顔部分が焼かれた免許証とカセットテープを発見したそうだ。カセットテープには、荘厳なクラシック音楽が録音されていたという。

「樹海に入れば必ず遺体を見つける」という都市伝説があるが、最初に樹海を訪れてから10年以上、著者は死体を見つけることはなかったという。

 しかし、ある時ついに見つけてしまった。写真を撮影している時に視界に違和感を覚えて目を凝らすと、深い緑の中に“水色”を発見。近づいてみると、水色の作業服を着た初老の男性の遺体が木にぶら下がっていたという。

 傍らには、コンビニ袋に入った弁当の空き箱と、スタミナドリンクの瓶が3本。今から命を絶つという決意を固めるために、気合を入れてスタミナドリンクを飲んだのだろうか。

 本書では、樹海の成り立ちや樹海散策の仕方なども解説。スーツ姿で行くと自殺志願者と思われ地元の監視員に詰問されやすいので、登山服と登山靴を装備して出かけよう。

【連載】ニュースこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  2. 2

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  3. 3

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  4. 4

    大阪万博「遠足」堺市の小・中学校8割が辞退の衝撃…無料招待でも安全への懸念広がる

  5. 5

    「クスリのアオキ」は売上高の5割がフード…新規出店に加え地場スーパーのM&Aで規模拡大

  1. 6

    のんが“改名騒動”以来11年ぶり民放ドラマ出演の背景…因縁の前事務所俳優とは共演NG懸念も

  2. 7

    「ダウンタウンDX」終了で消えゆく松本軍団…FUJIWARA藤本敏史は炎上中で"ガヤ芸人"の今後は

  3. 8

    189cmの阿部寛「キャスター」が好発進 日本も男女高身長俳優がドラマを席巻する時代に

  4. 9

    PL学園の選手はなぜ胸に手を当て、なんとつぶやいていたのか…強力打線と強靭メンタルの秘密

  5. 10

    悪質犯罪で逮捕!大商大・冨山監督の素性と大学球界の闇…中古車販売、犬のブリーダー、一口馬主