著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「暗渠パラダイス!」髙山英男、吉村生著

公開日: 更新日:

 暗渠とは、川や水路など水の流れに蓋をしたものを指す。これに対して、水面が見える普通の川や水路は、開渠または明渠という。その暗渠を街中で探しては楽しむ人を、暗渠マニアと呼ぶが、本書は、そのマニアが書いた入門書だ。

 蓋をしているから、一見、その下に何があるのかわからない。そういうときはサインを探すのだという。そのひとつが「車止め」だ。路地の入り口などに車が入れないように、車止めの杭などがあるが、あれは車が入っていくと蓋が壊れてしまう危険があるからなのである。

 こういう初級編から徐々に中級編、上級編へと進んでいく。「板橋三大暗渠」はさしずめ上級編だろう。東京都板橋区には、たくさんの暗渠があるが、特に流域面積が広いのが区の北側の新河岸川、荒川に並んで注いでいる「前谷津川」「蓮根川」「出井川」の3本だというのである。地図が載っているので、ここにこうやって暗渠があるのかと一目瞭然。板橋地区にお住まいの方は、休日にこの地図を見ながら暗渠散歩するのも一興だ。意欲的な前谷津川、おっとり夢見る蓮根川、いたずら大好き出井川、というのもおかしい。

 普段は何げなく通りすぎる道も、暗渠を意識して歩くと意外な風景が見えてくるのもいい。暗渠には、どうしてそうなったのかという街の歴史がつまっているので、それを考えるだけで面白いのである。

(朝日新聞出版 1800円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  2. 2

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  3. 3

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  4. 4

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  5. 5

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  1. 6

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー

  2. 7

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方

  3. 8

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  4. 9

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  5. 10

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした