「生物学探偵 セオ・クレイ 街の狩人」アンドリュー・メイン著、唐木田みゆき訳
9年前に失踪した息子の事件を調べてほしい、とセオ・クレイが依頼されるところから始まる物語だ。依頼者はもう息子の生存を諦めている。なにしろ失踪してから10年近くたっているのだ。しかし、やっぱりこのままでは気がすまない。息子をさらった男を捕まえたいと、セオ・クレイを訪ねてくる。
こうしてセオ・クレイは調査を始めていくが、連続殺人鬼を徐々にあぶりだしていく怒涛の追跡が圧巻で、あれよあれよと一気読み。第1作「森の捕食者」に続く第2作だが、今回も堪能できる。
この名探偵は殺人事件が発覚していないのに先に死体を発見してしまうほど鋭い推理力の持ち主なのだが、悩みもあって、それは推理があまりに鋭すぎるので警察が信用してくれないこと。それはそうだろう。まだ殺人事件があったかどうかわからないのに、先に死体を掘り出してしまうのだ。このあたりに埋まっているはずだと予言すると、本当に死体が現れるから、これでは、おまえが犯人だろと疑われても仕方がない。
今回の敵は連続殺人鬼で、闇にひそむそのシリアルキラーの存在を指摘しても、警察がなかなか信用してくれないが、前作とは違って今度は訳がありそうだ。その警察の事情とは何なのかを書いてしまうとネタばらしになるので、前作とは少しだけ異なると書くにとどめておく。前作と共通しているのは今回もスリル満点で面白いことだ。
(早川書房 940円+税)