「これからの時代を生き抜くための生物学入門」五箇公一著

公開日: 更新日:

 生物の性には「有性生殖」と「無性生殖」の2種類があり、日常で目にする生物や植物は圧倒的に有性生殖が多い。有性生殖のメリットは、個体同士で遺伝子を交換して新しい遺伝子セットを生み出せば、その中から環境の変化に適応できる個体が生き残れることにある。

 ところが、進化の過程で有性生殖をやめたと思われるのがガブリダニだ。オスはメスと交尾して受精させるが、受精卵が育つ過程でオスの精子の遺伝子は溶けてなくなる。ガブリダニのオスが少ないのは安定した環境下では無駄飯食いのオスは不要、ということを意味している。実は生物という観点からは男性の草食化も同じ。生活資源を女性がひとりで獲得できれば、強いだけの男は不要になる。つまり、男性の軟弱化は社会環境の変化に順応した結果といえるのだ――。

 人間の差別やいじめ問題、LGBTに対する考え方など、ウィズコロナ時代を生き抜くためのヒントを生物学を通して探った面白読み物。「生物学と未来」の章では新型コロナウイルスについて言及。その特性を分析しながら、ウイルスを制することができるか否かは人間が持つ特異的な「利他行動」がとれるかにかかっている、という一言にはっとする。

(辰巳出版 1500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  2. 2

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  3. 3

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 4

    「べらぼう」大河歴代ワースト2位ほぼ確定も…蔦重演じ切った横浜流星には“その後”というジンクスあり

  5. 5

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  1. 6

    「台湾有事」発言から1カ月、中国軍機が空自機にレーダー照射…高市首相の“場当たり”に外交・防衛官僚が苦悶

  2. 7

    高市首相の台湾有事発言は意図的だった? 元経産官僚が1年以上前に指摘「恐ろしい予言」がSNSで話題

  3. 8

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  4. 9

    大谷翔平も目を丸くした超豪華キャンプ施設の全貌…村上、岡本、今井にブルージェイズ入りのススメ

  5. 10

    高市政権の「極右化」止まらず…維新が参政党に急接近、さらなる右旋回の“ブースト役”に