「アンダークラス」相場英雄著
警視庁継続捜査班の田川信一の元に、第一強行犯捜査係の梶山から人捜しの依頼が持ち込まれる。来日を支援したベトナム人女性の技能実習生アインが失踪してしまい、彼女が入管に摘発されれば面倒なことになるため、窓際族を自称する田川にその任務が回ってきたのだ。
ところが捜索を始めようとした矢先、アインが老人施設の入居者・藤井の自殺幇助をした容疑で逮捕される。劣悪な労働環境に耐えかね神戸の裁縫工場から飛び出したアインはその後、ベトナム人ネットワークで仕事を見つけながら日本列島を北上し、秋田の老人施設で働いていた。彼女はそこで重篤ながんを患っていた藤井に頼まれ、自殺を幇助したと自供した。
しかし、田川は不自然に固まった死体の手を見て、他殺の疑いを深める。調査を進めるうち、事件の裏に世界的な大手流通業者の姿が見えてくるのだが……。
「震える牛」「ガラパゴス」に続く田川信一シリーズ第3弾。外国人労働者問題に象徴される買いたたかれる人材の実態や、巨大企業が生み出す過酷な仕事環境など、社会の底が抜けたリアルな日本が見えてくる。
(小学館 1700円+税)