「おばんでございます」桜木紫乃著
「雪虫」で第82回オール読物新人賞を受賞して単行本デビューし、「ラブレス」で第19回島清恋愛文学賞、「ホテルローヤル」で第149回直木賞を受賞した著者による初のエッセー集。
近年華々しい活躍を見せる著者だが、新人賞を受賞してから5年半、いくら書いても全く単行本を出すことができない暗中模索の時期があった。そうした日々の中で編集者と丁々発止のやりとりをしつつ、時には意気消沈し、時には発奮しながら「ブンゴー」を目指して修業に励んだ日々をユーモラスにつづる。
他の作家の作品を300枚“写経”してやっと自分の文章の癖に気づくことができたこと、本が出せないことに焦り他社の賞に応募したものの新人ではなかったために選考から外れた末に「絶対に小説をやめないで」と編集者に言われたこと、直木賞候補になった際に「誰が応募してくれたんですか?」と質問して笑われたこと、エッチなタイトルを考えてと請われて夫のエロDVDやフランス映画を漁ったこと等々、数々の裏話を披露。
巻末には地元北海道で活動する「シークレット歌劇団0931」主宰の愛海夏子との対談も収録。
(北海道新聞社 1300円+税)