「小麦の法廷」木内一裕著
主人公は、司法修習を終えたばかりのフリーの新米弁護士・杉浦小麦。弁護士事務所に所属していない小麦は、自力で仕事を開拓するほかなく、相続がらみの人探しの仕事をするしかない状況になっていた。
そんなある日、ある傷害事件の国選弁護人の仕事が舞い込んでくる。目撃者の証言もある上に被告人はすでに罪を認めているとあって、初めて扱う刑事事件にぴったりの比較的簡単な仕事だと思って引き受けた小麦だったが、その被告人が同日に別の場所で起きた殺人事件にかかわっている疑いがあることがわかってくる。アリバイづくりのためになされた偽装事件を弁護しているのではないかという疑いが膨らむなか、小麦は難しい判断を迫られることになるのだが……。
2013年に原作が映画化された「藁の楯」で小説家デビューして以来、根強いファンを持つ著者の最新作。レスリング競技の元オリンピック候補者という経歴から一転弁護士になったばかりの主人公が、司法の穴をついて悪事をごまかそうと企む一派にどう挑むかが読みどころ。最悪の事態を切り抜ける女性弁護士の奮闘ぶりが頼もしい。
(講談社 1500円+税)