「風致の島」赤松利市著
東南アジアの巨大開発計画を受注したスーパーゼネコンの現地駐在員として派遣された青木は、計画が頓挫したあと会社を辞めたが、不正行為で得た金を手に島に舞い戻り、隠遁生活を送っていた。
そんなある日、現地法人の元同僚・西村から、カジノを核とするペニー島の総合リゾート開発計画に一枚噛まないかと持ち掛けられる。にわかには信じられない話だったが、裏の事業主の存在を知った青木は承諾。利権に食い込むために密かに動き出すが、日系免税店の総支配人、カラオケバーのママと愛人のイタリア人マフィアらまでが計画に触手を伸ばしてくる。
一方で青木は、島の男ワヤンの第2夫人で、精神を病んだ日本人女性ミチコを檻で飼っていた……。
黒呪術、祭礼など、島の風土を織り込みながら、リゾート(風致)を舞台に利権と性に群がる男たちの姿を描いた謀略小説。印僑の組織、ゼネコン本社など人間関係が複雑に絡み合い、誰が味方で誰が敵なのか、いくつもの思惑が蠢き、いつしか青木の人生の歯車が狂っていく……。
最後に笑うのは一体、誰なのか。大藪春彦賞作家が描くどんでん返しの連続にめくるページが止まらない。
(講談社 1600円+税)