「あの懐かしい味の野菜を自分でつくる」岩崎政利、関戸勇著
日本書紀にも記されるほど、日本人に古くから食べられていたダイコン。日本各地で、お馴染みの白いものから赤や丸、辛味の強弱などさまざまなダイコンが作られてきた。
だが、今、店頭に並ぶのは「青首ダイコン」一色だ。ダイコンに限らず、店で買える野菜は、輸送に便利なように形が揃い、日持ちするように作り出された通称F1(エフワン)と呼ばれる交配種ばかりになってしまった。
本書は、子供の頃に丸かじりした滋味あふれるトマトや、ほのかな甘味を感じるマクワウリなど、昔ながらの懐かしい味がする伝統野菜を「昔野菜」と名付け、家庭菜園での育て方を解説したビジュアルテキスト。
昔野菜は家庭菜園に向いているという。野菜の自然なサイクルに合わせて作るので、肥料も少なく農薬に頼らない健全な野菜作りが実現。一度の収量は多くはないが、収穫が長く続くからだ。
タネも、最初は買うにしても、2回目からは自分で採ることもできる。
端境期で野菜が少なくなる4月に採れる「葉ゴボウ」は、密植させることで軟らかく育つ。葉から茎、根まですべて刻んできんぴらにすると香りが生きておいしいそうだ。
その他、江戸時代に「ヒユナ」の名で栽培されていた「バイアム」や「オカノリ」などの春野菜に始まり、未熟な小さな実から太くなってしまったものまで成長のどの過程でもおいしく食べられる「地キュウリ」、無肥料の土で育てたほうが味が良いという秋収穫の「ツクネイモ」、そして福岡県博多の在来種「かつお菜」などの冬野菜に至るまで134種を網羅。
栽培のコツや簡単レシピ、さらには畑づくりや、タネの採り方と保存法まで、至れり尽くせり。長引く「おうち時間」を、家庭菜園で楽しくおいしく過ごそう。
(新潮社 2100円+税)