「どうぶつおやこ図鑑」マヤ・セーヴストロム著、井上舞訳
人間はいうに及ばず、どんな生き物にとっても我が子は格別な存在。ただ、その愛情表現は千差万別で、中には驚くようなものもある。
動物たちのそんな知られざる親子関係を教えてくれるイラスト図鑑。
例えば、世界中の動物園で大人気のコアラはユーカリの葉しか食べない。しかし、その葉はとても硬いので消化するのが大変。だからコアラの赤ちゃんは、最初にお母さんの「ウンチ」を食べてユーカリを消化するための微生物を受け継ぐ。
一方、コクチョウのつがいの4分の1は、同じ性別だそうだ。オス同士のつがいには子供が出来ないので、短い間だけメスと一緒になり、ひなが生まれるとメスを追い出して自分たちだけで子育てをするという。
オス同士のつがいが育てたヒナの方が生き残る確率が高いそうだ。
他にも、子供を産んだことがないメスでも他のメスが産んだ赤ちゃんにお乳をあげることができるミーアキャットや、多数のメスがひとつの巣に産んだ卵をオスが温め、孵ったヒナも育てるダチョウの仲間のレアなど、人間とはちょっと異なるが深い絆を感じる動物親子の興味深い生態が簡潔な説明とほのぼのとするイラストで紹介される。
中には、生まれたヒナが天敵に食べられないように高い崖の上に作られた巣から、崖下で待っている親のもとに行くために、空もまだ飛べないのに400メートルも崖を転がり落ちなければならないカオジロガンや、生まれたての赤ちゃんを巣に残してほとんど戻ってこないウサギ(そのために親は自分の毛でふわふわで暖かい巣を作ってはいるが)など、それで大丈夫なのかと心配になってしまう親たちもいる。
親子で楽しめる動物たちの妊娠、出産、育児の面白いエピソードが満載。
(化学同人 1500円+税)