松方弘樹は釣りと並んで女にも入れあげて力いっぱい生きた
弘樹が役者稼業以外で、釣りと並んで入れあげたのが「女」だった。
とにかく、女にモテたし、しかも無類の女好きときている。口説くときはひたすら押しまくる。その強引さに女はほだされるんじゃないかな。こんなこともあったよ。映画のタイトルは忘れたけど、撮影が終わり、弘樹を俺の車に乗せて自宅まで送っていったんだ。あいつが西麻布のマンションを東京での根城にしていた時期で、到着まで時間にしてわずか10分か15分。その間、助手席でずっと、女に電話していた。それも口説くというより、「今すぐ行くから、早くヤラせてくれ」なんて直截的な言葉がポンポン飛び出すんだから(笑い)。
もう50を過ぎていた頃だよ。でも、体力も気力もみなぎっていたというか、仕事に対しても、女に対しても精力的だった。
おそらく弘樹は「女遊びは芸の肥やし」というくらいに考えていたはずだよ。それが時代劇スターであった父親の近衛十四郎さんの教えなのか、あいつ自身のモットーなのかは知らない。今のように役者に清廉潔白が求められる時代は、あいつにはさぞかし生きにくかったと思うよ。だいたい昔のスターなんてみんな艶福家だったし、マスコミがそれを書き立てることもなかった。
松方弘樹は役者としても、一人の男としても、人生を思う存分、力いっぱい生きた。俺はそう解釈している。(つづく)