NHK「うたのおにいさん」だった杉田あきひろさん 覚醒剤で逮捕されたその後

公開日: 更新日:

杉田あきひろさん(ミュージカル俳優、歌手/56歳)

 覚醒剤取締法違反の現行犯で逮捕されたのは2016年4月。NHKの子供向け人気番組「おかあさんといっしょ」の元「うたのおにいさん」だったため、いやがうえにも注目を浴びた。同年6月、懲役1年6月・執行猶予3年の判決を受けた。あれから丸5年。杉田あきひろさん(56)の今を直撃した。

  ◇  ◇  ◇

「おまえみたいな薬物中毒は一生、薬中のままじゃ!」「出て行け! 二度と姿見せるな! 二度と敷居をまたぐな!」

 忘れもしない。3年前の5月21日、杉田さんは6歳上の兄から、こう罵倒された。

「当時、僕は長野県上田市郊外にある薬物依存症者向けの全寮制回復施設『長野ダルク』で、プログラムに沿った生活をしていました。で、18年5月20日、入所して丸2年を経たものの将来への不安に押しつぶされ、規律違反なのですが実の妹が暮らす県内のある町へ“脱走”してしまったのです」

 それを妹から聞いた兄が大激怒。福井県の実家から深夜に高速道路を5時間ほどかけて車で駆けつけ、わずかな所持品もろとも妹の家から叩き出した。その揚げ句に投げつけたのが、冒頭の言葉だった。

あの事件のせいで、家業を継いでいた兄にはとてつもない迷惑をかけ、業務にも多大な支障をきたしたのは事実。僕には反論する一片の言葉も気力もありませんでしたね」

 暗闇の中、呆然と立ち尽くしていると、兄の目を避けて妹が寄り添った。

「あき、死んだらあかんで。何があっても生きるんやで」

 毛布と作ったばかりのおにぎりを押し付けられた。

「あの温もり、お塩控えめの味。僕は一生忘れられないでしょうね」

■「歌うことで誰かのお役に立てるなら」

 杉田さんと会ったのは都内のターミナル駅のそば。仕事帰りに寄り道してもらった。

「今年の4月21日、それまで住んでいた長野県松本市からこの近くに引っ越しました。松本では介護士をしていたんです。今は電話による営業代行会社で働きながら、歌手活動を少しずつ再開しています」

 取材に合わせ、伸びていた髪の毛を馴染みの美容室でカットした。

「7月4日、京都・宮津市の歴史の館で開催される『音楽の「チ・カ・ラ」感動コンサート~医療従事者のみなさまに感謝を込めて~』にゲスト出演させていただきますので、タイミングが凄く良かった。まさに一石二鳥(笑い)」

 この音楽イベントは、かつてライブツアーで何度も共演したジャズピアニストの金谷康佑氏の主催。クラウドファンディングで行う。

「新型コロナでコンサートやライブが思うように開催できないだけに、今の僕にとっては本当にありがたい。ましてや歌うことで誰かのお役に立てるなら、歌手冥利に尽きますね」

「環境を変えて過去の関係を遮断するのは重要」

 16年6月の判決後、直行した長野ダルクでの生活は丸3年。6時起床、5~6キロの早朝ランニングを吹雪でも台風でも行い、日中は耕作地で農作業。その後、屋内外の清掃、グループセラピーを行い、20時30分就寝。外部からの誘惑を遮断するため、携帯電話の所持は禁止だ。

「本当につらかった。真冬は氷点下10度以下になることはザラ。そんな中で走り、農作業もしますからね。でも環境を変えて過去の関係を遮断するのは、薬物やアルコール依存から脱却するにはとても重要です。ある方は、携帯電話を持ち都内のアパートに一人暮らしだったのが良くなかったと思います」

 相談相手がいない、無職、無収入による孤独感、明るい将来を想像できないと、悪い誘惑に負けがち。時には自暴自棄になり、新たな犯罪に手を染めてしまうことも。

「今の僕には、同時期に逮捕された清原和博さん、(元NHKアナウンサーの)塚本堅一さん、高知東生さんら、過去の薬物犯罪から立ち直ろうと奮闘している仲間がいます。この3人には、気兼ねなく相談に乗ってもらったりアドバイスをもらったりしていて、一緒に講演会活動をしています。また、親身になってサポートしてくださってる支援者の方々も大勢います。一歩一歩ですが、前を向いて進んでいきたい」

 6月から、ダンサーで女優でもある成美智子さんとウェブ会議サービス「Zoom」を使ったオンラインレッスンも開始。音楽活動、講演会活動は杉田さんが更新するツイッター、フェイスブックで発信中だ。

(取材・文=高鍬真之)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  2. 2

    萩原健一(6)美人で細身、しかもボイン…いしだあゆみにはショーケンが好む必須条件が揃っていた

  3. 3

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  4. 4

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  5. 5

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  1. 6

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  2. 7

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”

  3. 8

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  4. 9

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  5. 10

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  2. 2

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  3. 3

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  4. 4

    ヤクルト茂木栄五郎 楽天時代、石井監督に「何で俺を使わないんだ!」と腹が立ったことは?

  5. 5

    バンテリンドームの"ホームランテラス"設置決定! 中日野手以上にスカウト陣が大喜びするワケ

  1. 6

    菜々緒&中村アン“稼ぎ頭”2人の明暗…移籍後に出演の「無能の鷹」「おむすび」で賛否

  2. 7

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  3. 8

    ソフトバンク城島健司CBO「CBOってどんな仕事?」「コーディネーターってどんな役割?」

  4. 9

    テレビでは流れないが…埼玉県八潮市陥没事故 74歳ドライバーの日常と素顔と家庭

  5. 10

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ