「初恋、ざらり」小野花梨と風間俊介が確かな演技力で伝える“当事者”のリアル
中盤に差し掛かった「初恋、ざらり」(テレビ東京系)は、一筋縄ではいかない恋愛物語だ。
ヒロインは軽度知的障害と自閉症がある上戸有紗(小野花梨)。運送会社でアルバイトをしているが、仕事の流れが理解できなかったり、空気が読めずに周囲とぶつかったりして落ち込んでしまう。
そんな有紗が、優しい先輩・岡村龍二(風間俊介)を好きになる。しかも両思いだ。初めての恋に一喜一憂する有紗。障害のことはずっと言えないでいたが、ふとしたはずみで告白してしまう。
このドラマでは、障害のある人たちが抱える、もどかしさやつらさなどが丁寧に描かれていく。たとえば、有紗はコンパニオンのアルバイトをしていた頃、客から強く体を求められると応じてしまった。誰かに「必要とされる」ことで、「自分の価値」を確かめていたのだが、見る側も切なくなるエピソードだ。
一方、有紗の障害を知った岡村の心も揺れ動く。彼女の母親(若村麻由美)から「あんた、有紗の面倒を一生みてくれるの?」と迫られ、何も言えなかった。また、“普通”であろうと無理をして倒れた有紗を見たとき、自分が追いつめていたことに気づいて愕然とする。
障害のある当事者のリアル。障害のある人を支えようとする側のリアル。それぞれが背負う葛藤を、小野と風間が確かな演技力で見る側に伝える、静かな問題作だ。