「しらゆきの果て」澤田瞳子著
「しらゆきの果て」澤田瞳子著
60歳を越えた絵師の喜平治は扇面に絵を描いて食べているが、ある日、弟弟子の長助がやってきて、以前から父親が捜していた菱川師宣の息子を見つけたと告げた。師宣が亡くなったのはもう50年も前である。
長助が観音様の縁日にその男を見かけて後をつけてみたら、姥ケ池裏の総泉寺の離れに帰った。吉左衛門という名で、孫娘と孫息子と暮らしているという。喜平治が訪ねてみると、人違いだと言って家に入れようとしなかったが、かつて菱川の工房にいた絵師の宮川長春が行くと、孫息子の伊平は画描きになりたいと訴えた。(表題作)
絵師を主人公に「美」の神髄を描く5編の歴史小説。
(KADOKAWA 1980円)