松本若菜「西園寺さんは家事をしない」は一見、適温のラブコメだが…
猛暑の中、暑苦しい恋愛ドラマは見たくない。その意味で、松本若菜主演「西園寺さんは家事をしない」(TBS系)の温度と湿度は好ましい。
アプリ制作会社で働く西園寺一妃(松本)は38歳の独身。仕事は好きだが、家事は大嫌い。最近、家賃収入が見込める賃貸付き物件の中古住宅を購入。家事ゼロの日常を目指してリニューアルしたばかりだ。
ところがその賃貸の部屋に、同じ会社のエンジニア・楠見俊直(松村北斗)と4歳の娘ルカ(倉田瑛茉)が住むことになる。優雅で気ままな1人暮らしは一転し、大家と店子の関係を超えた「偽家族」としての生活が始まってしまった。
幼い娘を抱えて仕事と家事の両立に追われる楠見。彼を助けることで、西園寺の理想の生活が脅かされるのではないか。楠見も見る側もそれを心配した。しかし、西園寺は言う。
「やりたくないことをやってる人を、やらなくていいようにすることが、私のやりたいことだからやってるの!」
その言葉の背後には、完璧に家事をこなしていた母親が、突然家を出てしまったという少女時代の苦い記憶がある。
家事とは炊事、洗濯、清掃、さらに育児なども含む、毎日処理すべき生活上の実務全てだ。家事との向き合い方は、その人の「生き方」に関わっている。一見、適温のラブコメだが、意外な奥深さがありそうだ。