「うつ病」の原因は感染症? 新説で治療はどう変わるのか

公開日: 更新日:

 つまり、うつ病や双極性障害といった「気分障害」や「不安障害」などは、脳の神経細胞が元に戻らないほど深刻なダメージを受ける手前の段階とも考えられるのだ。

 では、この新しい考え方に従うと、現在の抗うつ薬の代表的なターゲットであるセロトニンはうつ病には無関係なのか?

「そうではありません。脳内のミクログリアが放出する炎症性サイトカインは、セロトニンの原材料であるアミノ酸(トリプトファン)の代謝をセロトニンが作られない方向に誘導します。さらに、セロトニンの再取り込みを行うセロトニントランスポーターの働きを活発にするため、脳内のセロトニンが不足してうつ症状が生じやすくなるのです」

 つまり、炎症がセロトニン不足を誘導し、うつ病の引き金になるという。

 この「うつ病炎症説」が正しいとすると、具体的にうつ病の治療はどう変わるのか?

「炎症を抑えるため、従来の向精神薬に加え、解熱鎮痛剤や慢性関節リウマチ治療などに使われる生物学的製剤などが積極的に使われるようになるかもしれません。実際、慢性関節リウマチ治療などに使われる生物学的製剤を抗うつ薬と併用し、治療困難なうつ病(難治性うつ病)が改善したとの研究結果が海外で報告されています」

 謎の多いこころの病気が解明され、うつ病が根治できる日は確実に近づいている。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…