胃がんに「抗がん剤は効かない」は大きな勘違い
スキルスタイプの胃がんでは、がんが胃の壁の中を這うように進み、胃が膨らまなくなってしまいます。さらに進むと、がんは壁を越えて腹膜にばらばらとまかれ、がん性腹膜炎を起こして腹水が出てくるのです。
進行した胃がんの治療は、まず手術でがんを取り切ることが優先されます。抗がん剤治療は、主に手術ができないほど進んでいる場合、手術してもがんが残った場合、手術でがんが取れても再発の予防として行われます。
手術ができないほど進んでいる場合の抗がん剤治療では、最近の臨床試験で「少なくとも約50%の患者はがんの大きさが治療前の半分以下になる」という報告がみられます。また、抗がん剤の種類も増え、分子標的治療薬も使えるようになりました。ただ、全く効かない場合もあること、どれくらい長く効いてくれるか分からないという問題点があります。
抗がん剤治療と言われると、敬遠したくなる気持ちになるのはよく分かります。中には、「抗がん剤」という単語を聞いただけで拒否される方もおられます。しかし、Sさんのように抗がん剤治療後に手術して治った方、Kさんのようにリンパ節転移が消えた方、Cさんのように長く効果がみられている方など、抗がん剤治療が奏功している患者さんはたくさんいるのです。
日本では胃がんが多く、亡くなられる方もたくさんいらっしゃいます。私がみとった患者さんもたくさんおられます。
「胃がんは抗がん剤では治らない」と自己判断して抗がん剤治療を一度も受けないのは、とてももったいないと思うのです。