本人に隠すのは昔の話 「がん告知」は時代によって変わる
「分かりました。それでは、『胃がんですが、肝機能が良くないので手術は危険です。がんは小さいので薬で治療しましょう』と伝えるようにします」
しかし、化学療法の効果がなかなか得られず、病状が進むと肝転移は大きくなり、お腹の外からも分かるように膨れ上がります。当時、CT検査の画像を患者さんの前で説明するようなことはしませんでした。ご本人は分かっていたかもしれませんが、自分から病状の悪化の理由を聞いてくることもありませんでした。
「医師は、患者に対して短い命であるようなことは告げない」というのが一般的だったのです。そして、患者さんは専門的なことは分からないので「先生にすべてお任せします」という時代が続いてきました。
しかし、医療情報がテレビ、情報誌、インターネットと日常生活の場にあふれるようになりました。21世紀に入ってからは、患者が自分の病気を知り、医療行為、治療方法を自分で選択する。そして、より専門的な医療、先端医療を求め、医師、医療機関を自由に選択することが当然のようになってきました。