「肺がん手術」最前線 切除数国内最多の第一人者に聞いた
完治が可能ながんでは、「いかに機能を温存するか」が次の課題だ。
「手術適応の肺がんでは、肺葉切除が標準治療です。これを肺葉よりもさらに小さい単位である区域レベルでの切除(一部の切除)にすれば、肺の機能を残せます。肺の機能を最大限に残すには、どれくらいの区域切除が可能か。現在臨床試験中で、2020年には論文発表になる見込み。世界初の発表になります」
機能温存はできても、腫瘍の取り残しがあれば本末転倒だ。区域切除ができる患者の見分けが重要になる。渡辺科長らは「CTですりガラス状陰影が確認された2センチ以下の腺がん」を対象とし、さらに、手術中に病理医が顕微鏡でがんの「顔つき」を調べ、区域切除でいくかどうかの最終判断を下している。
「目に見えない小さな転移も見落とさないようにするためです。CTの診断、腫瘍の取り残しのない外科医の手術、肺の病理医による顕微鏡検査の3つがしっかり成り立っていないと、『再発リスクのない区域切除』は不可能です」
区域切除はほかの医療機関でも試みられているが、現段階では、どの患者にどのように行うかは、医師の判断に任されている。2020年以降、上述した臨床試験の結果をもとに、早くガイドラインができることが待ち望まれる。