胃がん予防だけにあらず ピロリ菌除菌を高齢者に勧める理由
「血栓予防薬であるNOACを服用している人の消化管出血と生命予後を調べた研究では、服用によって消化管出血が起こりやすく、約15%死亡率が上がるとの結果が出ています」
そして消化管出血のリスクは、ピロリ菌によっても高まる。「ピロリ菌がいる人は1.8倍」「痛み止めを飲んでいる人は4.9倍」「ピロリ菌がいて、痛み止めを飲んでいる人は6倍」高くなる、との報告もある。
「痛み止めや血栓予防薬は必要があって服用しているもので、たいていは今後も継続しなければならない。一方、ピロリ菌は治療で除菌でき、消化管出血のリスクを下げられます」
■感染でも自覚症状はゼロ
内山院長が上部内視鏡検査でピロリ菌陽性の患者103例の除菌前後の内視鏡所見を検討したところ、炎症に関係する細胞(好中球と単核球)が除菌前は多いが、除菌後大幅に減少。つまり、炎症がない状態になった。
さらに、70歳以下と71歳以上に分けて調べると、減少の程度は同等。高齢者でも、除菌治療で「炎症を起こさない消化管粘膜」を得られることが分かった。一方、除菌治療の成功度は、70歳以下、71歳以上ともに同程度だった。心配される副作用についても、70歳以下、71歳以上で同程度。