著者のコラム一覧
永田宏長浜バイオ大学元教授、医事評論家

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

孤独<10>ICTが中高年を救い認知症予防になる?

公開日: 更新日:

 アメリカで高齢者205人(男性36人、女性169人、平均年齢83歳)を対象に行われた研究では、ICTの使用頻度が高い人ほど、孤独感や社会的孤立が少ないことが示されました。ICTを頻繁に使っている人は、「家族や友人と連絡を取りやすい」「家族や友人とつながっていると感じている」「新しい友人・知人を得やすい」「人とのコミュニケーションの回数が多く、質も高い」「孤独感が軽い」などの傾向があることが示されました。同様の研究が多数報告されています。

 しかし別の研究で、142人の高齢者(平均年齢72歳)を対象に、フェイスブックの利用と孤独感や社会的満足度の関係を調査したところ、孤独感とフェイスブックの利用には相関関係が見いだされなかったといいます。オランダで行われた同様の調査でも、SNSの利用と孤独感との間に相関はなかったとされています。ただ、フェイスブックなどを使っている高齢者は主に家族と連絡を取り合っており、社会的満足度が高いという結果も出ています。

 ICTが認知症の改善に役立つかを調べた研究もあります。正常な高齢者49人と、初期の認知症患者34人を半数ずつに分け、片方の群には6週間にわたって週5日間、専門家がPCのビデオチャットで30~35分間の面談を行い、もう片方の群と比較しました。すると正常者も認知症患者も、ビデオチャット群の方が脳の認知活性が高まっていたのです。

 ICTで孤独感が改善されるとは断言できませんが、家族や親しい友人との連絡に利用することで、生活の質や精神的な健康を保てるかもしれません。定年後が心配な人はフェイスブックやラインを始めてはいかがでしょうか。

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