ニオイが消えたら黄信号 認知症は嗅覚を鍛えて予防・改善
6月14日は認知症予防の日だ。日本で認知症の6割を占めるアルツハイマー病を発見したドイツ人医師の誕生日にちなみ日本認知症予防学会が制定した。この病気が発見されて100年を超えるが、いまだにその原因も根本治療法も確立していない。わかっているのは、においが消えた数年後にアルツハイマー病を発症し、嗅覚を鍛えると症状が改善、または発症を防ぐ可能性があることだ。その研究の第一人者で日本認知症予防学会理事長でもある鳥取大学医学部の浦上克哉教授に話を聞いた。
「アルツハイマー病になるとにおいがわからなくなると気付いたのは、患者さんの冷蔵庫の中を見てから。腐った食材が異臭を放っているのに気付かない。そんな方が何人もいたのです。20年以上前のことです」
その後の研究でこの病気は脳の「海馬」という記憶をつかさどる部位の神経細胞に、アミロイドβやリン酸化タウというタンパク質のかけらが蓄積されて神経原線維が変化し、神経細胞の連結部が消失することが判明。浦上教授らは、嗅神経により多くのタンパク質のかけらが集積していることに注目し、「アルツハイマー病は海馬より先に嗅皮質が障害を受け、神経原線維変化が神経細胞から神経細胞へと伝わり、海馬、新皮質へと拡散する」と考えて研究を進めている。