アルツハイマー病が軽症のまま? てんかん薬にかかる期待
死去が報じられた女優で歌手の朝丘雪路さんは、アルツハイマー型認知症(以下、アルツハイマー病)だった。根治法がない病気だが、早期にある薬を飲めば、軽症で一生を送れるかもしれないことが分かってきた。
アルツハイマー病の治療の一つが、抗認知症薬で進行を遅らせること。アルツハイマー病を発症するとアセチルコリンという神経伝達物質が減少していくが、抗認知症薬にはアセチルコリンの減少を防ぐ作用がある。ただし服用していくにつれ、効果が薄くなる。
一方、いま研究が行われているのが、「アミロイドβ」というタンパク質との関係だ。
アルツハイマー病の患者の脳には発症前からアミロイドβがたまることが分かっており、神経細胞を興奮・死滅させ、認知機能を障害する。そしてアミロイドβは、てんかんにも関係している。
東京脳神経センター病院・堀智勝院長が言う。
「2009年に、アミロイドβで誘発される神経細胞の興奮が、てんかんの引き金になるという研究結果が発表されました。ヒューマンアミロイドβを産生できるマウスを使い、脳の海馬に電極を入れて実験を行ったところ、脳にアミロイドβがたまったマウスの少なくとも65%がてんかんを起こしたのです」