単なる擦過傷では済まない…靴擦れが引き起こす意外な病気
ちなみに、TSSの原因となる毒素から身を守るための抗体は年齢とともに増えていく。そのため、TSSのリスクは若い人ほど高いといわれている。
「靴ずれからTSSを発症する例はマレですが、国内外で報告されています。たとえば新しいサッカーシューズに替えた時に水疱を伴う靴ずれが生じ、TSSを発症した男児2例が海外で報告されています」
日本ではスケートでの靴ずれからTSSを発症した6歳の男児の例がある。この男児はスケートをした際に靴ずれを起こし、左のかかとの皮膚が化膿した。4日後に39度台の熱が続き、手足に発赤・腫脹があり、全身に紅斑が表れた。立ち上がるときに頭痛を訴え、上の血圧が80㎜Hgで低血圧の状態だったという。発症時が2月下旬だったためインフルエンザも疑われたが、検査で除外された。
幸い処置が早くこの男児は数日で完治、退院したという。
「TSSを発症すると急激に病状が悪くなります。放っておくといずれ治るということは決してありません。入院して治療を受けなければならないのです。それを防ぐには靴ずれであろうが、虫刺されであろうが、傷口を水で洗い流した後でしっかり乾かすことです。その上で、傷口の周辺から分泌される組織液を逃がさないよう、被覆材を使用するといいでしょう。化膿した際には医療機関を受診してください」
靴ずれや鼻血、虫刺され、ささいな傷などをむやみに恐れる必要はないが、傷口を清潔にしておかないと重症化して命のやりとりになる場合がある。覚えておこう。