見えてきた認知症のメカニズム 自然な睡眠が予防に重要な理由
実際、実験用マウスでは覚醒時に比べ、睡眠中に脳間質液中のAβが大幅に減ること、マウスを寝かせないとAβが凝集してできる老人斑が多数出現したことなどが報告されている。
睡眠は脳内の脳脊髄液と間質液の流れを改善して神経細胞外に蓄積するAβを流れやすくするなど、脳内老廃物の排出を後押しするという報告もある。
「アストロサイトと呼ばれるグリア細胞の一種は、脳内の血管に張り付いて、血管から栄養を神経細胞に供給する一方で有害物質の侵入をブロックするなどの働きがあります。この細胞は睡眠中に一斉に縮小し、その結果、神経細胞外のスペースが広がり、Aβを排出しやすくしている、と提唱する海外の研究グループもあります」
■40ヘルツの脳波に注目
ミクログリアという別の種類のグリア細胞もAβを貪食することで、重要な役割を担っている可能性があり、この仕組みに睡眠中の脳波が関係しているとの見方もある。キッカケは3年前の米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の報告だ。
「ADの人はレム睡眠の時に多くあらわれるγ波(ガンマ波=31ヘルツ~)と呼ばれる脳波のリズムが乱れることが知られています。睡眠時にγ波が減り、覚醒時にも減っていくのです。このことが、認知症の進行を余計に早めている可能性があります」