見えてきた認知症のメカニズム 自然な睡眠が予防に重要な理由
人の睡眠は、急速眼球運動を伴うレム睡眠と伴わないノンレム睡眠の2つで構成されている。ノンレム睡眠時に出る4ヘルツ以下の徐波と呼ばれるゆっくりした脳波が、学習や記憶の定着に関わっているということがわかっている。ならばノンレム睡眠中の徐波を強化した方がよさそうだが、レム睡眠時の脳波も重要だという。それはなぜか?
「レム睡眠は良質なノンレム睡眠を促す作用があるからです。レム睡眠が少ないことが認知症のリスク因子だとの報告もあります。ところが、レム睡眠のことはほとんどわかっていません。実験用マウスのレム睡眠は30秒から1分程度しかなく、その間に脳でどのような変化が起きているかは観察しづらいことが大きな理由のひとつです」
また、寝付けない人が睡眠薬の力を借りて寝ても認知症予防にならない可能性があるという。
「睡眠薬の多くはノンレム睡眠を増やすもののその質は自然な眠りとは異なり、さらにレム睡眠の量をかえって減らす作用があります。麻酔薬で意識がなくなった状態も自然睡眠の時とは脳の活動が大きく異なるので、自然睡眠とは作用が異なる可能性があります」