運動は認知症の予防や改善に役立つか? 専門家に聞いた
「運動すれば特定のニューロンが発芽(軸索が伸びてネットワークを補強したり新しく作ったりすること)します。ニューロンが死んでも別のニューロンの発芽によりネットワークを作り直すことができます。このとき周りのグリア細胞も活動して必要な代謝物や栄養が脳内に運ばれる。結果、脳の恒常的な作用は保たれやすくなると思います。ただ、それでアルツハイマー病型認知症の病態抑制効果があるとはハッキリ言えないと思います」
たとえば、「手続き記憶」と呼ばれる記憶がある。文字を書いたり、自転車に乗れたり、楽器の演奏ができたりする、いわば段取りの記憶だ。同じような経験の繰り返しにより獲得でき、いったん記憶されると無意識に機能して長期間保存される。
「手続き記憶は手足を動かすことで記憶の回路が強化されるため、運動で記憶は強化されるでしょう。しかし、運動で人の顔を覚えるなど他のパターンの記憶も保持されるのか、という点については分かりません」
複雑な道を走るロンドンのタクシー運転手の海馬の灰白質(記憶にかかわる脳の領域)は年をとっても衰えず、成長しているという。