運動は認知症の予防や改善に役立つか? 専門家に聞いた
だから運転は認知症予防にいいのではないか、と考える人もいるだろう。
しかし、それは運動が関わる記憶を強化させているだけで、言葉などの認知機能全般をアップさせるわけではない。
「言葉の意味や物の名称などの一般的な知識や常識に関する記憶に『意味記憶』があります。これが障害される認知症が意味性認知症です。この病気を発症されたタクシーの運転手は、車を運転してお客さんを目的地に運ぶことができるのですが、車を運転する際に握るものを聞かれて、ハンドルと答えることができませんでした。記憶はカテゴリーによってある程度脳の働きが分かれている。運動すればある程度脳は鍛えられるのでしょうが、意味記憶まで保たれるか、といえば必ずしもそうではないのではないかと思います」
顔を記憶する脳の領域は決まっていて、その他の記憶は特定の領域を持つものも持たないものもある。「認知症予防に人の顔を記憶するよう心がけている」という人は、その領域を鍛えているだけで必ずしも認知機能全体を向上させることにはつながらない可能性がある。