薬でがんは予防できるのか アスピリンは大腸がんを抑制する
海外の論文では、低用量アスピリンを長期間服用している患者は大腸がんが少ないことが報告されています。また、大腸がんの前がん病変である大腸腺腫も低用量アスピリンでその発生が低下することが、いくつもの臨床試験で証明されています。また、アスピリンは食道がん、胃がんの発生を抑制しているとの報告もあります。
もしかしたら、私はその恩恵にあずかっているのではないかと思っています。まあ、そんなことを言っていても実は大腸がんが隠れていて見つかるかもしれませんから、油断は禁物です。
いずれにせよ、大腸がん予防のための低用量アスピリン内服は、今の日本の保険制度上では認められていませんが、ひょっとしたらいずれ実用化される日が来るかもしれません。また、とても厄介ながんとして知られている膵臓がんにおいても、アスピリンを5年以上内服している人では、疫学的研究から予防効果が示唆されています。しかし、乳がんや前立腺がんに対しては予防効果はないようです。
胃がんに関しては、その発生のほとんどがヘリコバクター・ピロリ菌感染によるものだと分かっており、抗生剤を使ったピロリ菌除菌で胃がんの発症を減少させることも判明しています。しかし、除菌によって胃がんが発生しなくなるかどうかまでは分かっていません。いずれにせよ、胃がんを減らすにはピロリ菌除菌が有効な手段であるのは確かで、胃がんの死亡率は1970年代から低下傾向にあります。